4-3. 黄金比とは何か|古代ギリシア幾何学と黄金率・フィボナッチ数列

じっくり 幾何
4-3. 黄金比とは何か|古代ギリシア幾何学と黄金率・フィボナッチ数列

黄金比とは

黄金比(外中比)とギリシアの幾何学

黄金比は、ギリシアの幾何学では外中比と呼ばれ、ギリシア「幾何学」のハイライトの一つです。黄金比のことをエジプト人が知っていたかどうかは疑問ですが、数学史では黄金比がよく出てくるのでここで説明しておきましょう。

ギリシアの「幾何学」は定規とコンパスだけで行うもので、数値は現れません。これは「禁止されている」というのではなく、そもそも前提となる概念のなかに数値が含まれていないのです。「幾何学」ではまず使ってもよい概念を公理や定義として述べてから理論を展開します。この方式はギリシア以降数学の標準として踏襲されてきます。ここでは、ギリシアの幾何学ではがどのように扱われているか、そのさわりだけをごく簡単に解説します。

「幾何学」では、長さ面積体積角度を抽象的な対象として扱います。『4-2.ピタゴラスの定理』で述べたように、「2つの線分 α と β が等しい」とは α と β の長さが等しいことを、「2つの平面図形 α と β が等しい」とは α と β の面積が等しいことを意味します。体積や角度についても同様です。

a と b を線分とします。以下では、□( a, b ) は a と b を2辺とする長方形を表します。上で述べたように、線分 a といった場合、線分 a の長さを表すことがあります。同様に、□(a, b) は長方形を意味する場合と、その長方形の面積を表わす場合とがあります。

ギリシアの比の理論

合同と相似

ギリシア人は比の理論を、「自然数の比」と「量の比」の2つに分けて独立に構成しています。自然数は量ではないからです。本連載では「ギリシアの比の理論」について深くは解説しません(書籍の方で詳しく述べようと思います)。しかし現代の皆さんは、比 a : b、あるいは同じことですが、分数 \(\frac{a}{b}\) のことをご存知だと思いますので、ギリシア人が比を図形的にどのように捉えていたかを説明するだけにします。

2つの図形 α と β が合同であるとは、α を移動すると β にぴったり一致するときのことを言います。したがって α と β が合同なら、α と β は等しいことになります。また、α を拡大あるいは縮小することによって β にぴったり重ね合わせることができるとき、 α と β は相似であるといいます。

皆さんは幾何の相似合同についてはすでに知っているものと仮定します。以下では a, b, c, d は線分の長さを表すものとします。次の形の式を比例式 といいます。

\(a : b = c : d\)(1)

ここで、2つの辺の長さがそれぞれ a と b , c と d の2つの長方形 □( a, b ) と □( c, d ) を考えましょう。

図4.3.2 のように2つの長方形を左下の角で重ねます。すると次が成立します。

相似a : b = c : d

\(a : b = c : d ⇔ □( a , b ) と □( c , d ) は相似\)(2)

ここで、「… ⇔ ~」は「… である必要十分条件は ~」と読みます。読者の皆さんは、(2) が比例式 a : b = c : d の定義だと思ってください。つまり、a : b = c : d とは、「a と b を2辺とする長方形を拡大または縮小すると c と d を2辺とする長方形にぴったりと重ねることができる」ことを意味します。

図4.3.2 のように2つの長方形を重ねます。すると、2つの長方形が相似である必要十分条件は、2つの対角線が重なることです。皆さんは、長方形の相似より図4.3.2の中の直角三角形の相似のほうが慣れているかもしれません。また、公式 (2) より次の公式の方をご存知かもしれません。

\(a : b = c : d ⇔ □( a , d ) = □( b , c )\)(3)

公式 (3) は、外項の積は内項の積に等しいと読みます。 (3) を証明しましょう。a : b = c : d とします。すると □( a , b ) と □( c , d ) は相似です。したがって、2つの対角線は重なります。図4.3.3より、三角形 (イ) と (イ’) は合同、三角形 (ロ) と (ロ’) も合同となります。同様に大きい三角形 (イロハ) と (イ’ロ’ハ’) は合同ですから、2つの長方形 (ハ) と (ハ’) は同じ面積となります。よって次が成立します。

外項の積は内項の積に等しいの証明

\(□( a, d ) = (イ)+(イ’)+(ハ) = (イ)+(イ’)+(ハ’) = □ ( b, c )\)

逆に、□( a, d ) = □( b, c ) が成立したとします。図4.3.4参照。 (イ)+(イ’) は2つの長方形の共通部分ですから (ハ) = (ハ’) となります。したがって、(イ’)+(ロ’)+(ハ’) は大きい長方形 □(c, d) の半分の三角形となります。よって、□( a, b )の対角線は □(c, d) の対角線と重なり、□( a, b ) と □( c, d ) は相似となります。

外項の積は内項の積に等しいの証明

黄金分割・黄金率・黄金比

黄金分割とは、線分 AB を点 C で次を満たすように分割する分割の仕方のことをいいます。

\(短い方 : 長い方 = 長い方 : 全体\)(4)

黄金分割

AC = a , CB = b とし、a < b とします。すると、(4) は次のように表されます。

\(a : b = b : a + b\)(5)

外項内項の規則 (3) より、次が成立します。

黄金分割

\(□^2 ( a ) + □( a, b ) = □^2 ( b )\)(6)

式 (6) では、 a + b は線分 a に線分 b をつないでできる線分を意味します。(6) は「辺 a 上の正方形と a と b を2辺とする長方形の和は b 上の正方形に等しい」を意味します。

ここまでがギリシアの幾何学のお話で、ここからは現代数学を使って黄金分割の説明をします。したがって、以下では a, b, c, d は正の実数とします。

(6) を満たす比 a : b を黄金比といい、\(\frac{b}{a}\) を黄金率といいます。\(\frac{b}{a}\) の逆数 \(\frac{a}{b}\) を黄金率と呼ぶこともあります。本連載では、\(\frac{b}{a}\) を黄金率としています。(6) の両辺を a2 で割ると、

\(1+ \frac{b}{a} = (\frac{b}{a})^2\)

となります。\(\frac{b}{a}\) = x と置いて整理すると、

\(x^2 = x + 1\)(7)

という2次方程式が得られます。この方程式の正の解は

\(φ = \frac{1+\sqrt{5}}{2} = 1.618033989\)

となります。この φ が黄金率で、比 1 : φ が黄金比です。

この続きは現在、電子書籍として編集中です

販売中の電子書籍を見る ›
この連載の目次を見る ›

Recommended e-books数学の旅を、もっと楽しく。もっと深く。