2-5. 円周と円の和 | ギリシアの三大難問「円の正方化」とは?

じっくり 幾何
2-5. 円周と円の和 | ギリシアの三大難問「円の正方化」とは?

地球を一周するロープを1m持ち上げると?

前節〔2-4 比の理論〕で比の公式がいくつか出てきました。今回はこれらの公式がどのように使われるのかを見てみましょう。その前に皆さんに問題を出します。頭の体操だと思って考えてみてください。

問題
地球の赤道をロープで結んだとします。地球は、表面がツルツルの完全な球だとします。ロープの長さは地球の周長の約4万キロメートルです。さて、このロープを1メートルだけ持ち上げるにはどのくらいの長さのロープが必要でしょうか。もちろん、ロープは伸び縮みしないものとします。
地球儀が左右に並び、中央に右向きの矢印がある。 	•	左側の地球儀には、赤道上をぴったりと一周するオレンジ色のロープが描かれており、その下に「赤道をロープで結ぶ」とキャプションがある。 	•	右側の地球儀では、同じロープが地表から均等に約1 m持ち上げられて地球を一周しており、その下に「ロープを1 m持ち上げる」とキャプションがある。

地球の周長は約4万キロメートルもあるので、ロープを1m持ち上げるには相当の長さを継ぎ足す必要があるような気もします。実際はどうなのでしょうか。
現在の皆さんは円周率πが使えますから円周は簡単に計算できます。地球の半径を r1メートルとすると、赤道の長さは 2πr1メートルになります。半径をr2(=1)メートル増やします。

中心に点があり、そこから半径 r_1 の円が薄い水色で塗りつぶされている。さらにその外側に同心円としてオレンジ色の線で半径 r_1 + r_2 の大きな円が描かれている。 	•	内側の円周に向かって斜め上から矢印が伸び、「2pi r_1」とラベルが付いている。 	•	外側の円周に向かって斜め右下から矢印が伸び、「2pi(r_1 + r_2)」とラベルが付いている。 	•	内側の円と外側の円の半径の差にあたる部分には角度 r_2 を示す小さな弧が示されている。

すると、

\(2π(r_1+r_2) = 2πr_1 + 2πr_2 \)(1)

となります。つまり、地球を結んだロープを1メートル持ち上げるには、ロープを 2πr2 ≒ 6.3メートルだけ継ぎ足せばよいことになります。

円周の足し算

古代では「円周の足し算」をどのように考えたか

(1) を古代の表現方法で表すと、

\(〇(r_1+r_2) = 〇(r_1) + 〇(r_2) \)(2)

となります。 〇(r1) は半径がr1の円の円周です。

アルキメデスは (2) をどのように証明したのでしょうか。

数学は、与えられた規則に従って行う団体競技や将棋などのゲームでと同じで、与えられた公理や規則以外のものは使うことはできません。使ってよいのは前節で述べた「比の規則」だけです。それでは (2) を証明しましょう。
〔円周率〕の定理より、

\(〇(r_1) : 〇(r_2) = r_1 : r_2 \)
\(〇(r_1+r_2) : 〇(r_2) = r_1+r_2 : r_2 \qquad (4)\)
(3)

が成立します。次に定理〔比の和〕の特別な場合

\(A:B = a:b なら (A+B):B = (a+b):b\)

を (3) に適用すると、

\(〇(r_1)+〇(r_2) : 〇(r_2) = r_1+r_2 : r_2 \)(5)

が得られます。(4) と (5) より

\(〇(r_1+r_2) : 〇(r_2) = 〇(r_1)+〇(r_2) : 〇(r_2)\)

この比例式の右項は共に 〇(r2) です。したがって、命題〔右項の一致〕より (2) が得られます。

円と長方形の定理

現代では、円を考えるときは常に半径を基準として考えますが、古代では半径よりは直径、直径よりは円周を基準として考えました。たとえば木材を伐採するとき、木の円周は木を切り倒さなくても測ることができるからです。円周が分かれば、円の直径や半径は円周から計算できます。次は、「円は円周を底辺、半径を高さとする長方形の半分」であることを述べています。

円と長方形
半径が r 周長が C の円に対し次が成立する。
\(○^2(r)=\frac{1}{2}□(C,r)\)

円に内接する正n角形と外接正n角形を考えます。〔 2-3 πの源流 〕でおこなった議論より、

\(内接正n角形 < 〇^2(r) < 外接正 n角形\)

が成立し、n が大きくなると、内接正 n 角形と外接正n角形は限りなく円に近づきます。図2.5.1 は内接正n角形と円を円の半径で切り、横に並べたものです。

図は左右二つの絵を並べた構成です。 	•	左側:底面が一直線上に並んだいくつかの円錐の側面図が描かれており、左端の底面端点に「A」、その右隣の円錐底面の端点に「B」、さらに右へ省略記号「…」、最後の円錐底面端点に「A′」とラベルがあります。各円錐の頂点は底面中央より上方に位置し、頂点から底辺までの高さはすべて同じく「hₙ」と示されています。 	•	右側:同じ高さ「hₙ」の直立する線分AOと、点Oを右端とする傾いた線分OA′を結んでできる直角三角形OAA′が描かれています。底辺上にはAとA′の間に点Bが等間隔にマークされています。縦辺AOの長さが「hₙ」と示されています。  中央の省略部を省きつつ、複数の円錐を高さ一定の直角三角形に置き換えるイメージを表しています。

線分AA’は正n角形の外周で、n が大きくなると、円周 C に近づきます。hn は △AOB の高さで、n が大きくなると、円の半径 r に近づきます。並んだ n個の三角形は高さがみな hn なので、この n個の三角形の和は、右の図の直角三角形 OAA’ となります。つまり、

\(内接正n角形 = △OAA’\)

となります。内接正n角形は円に近づき、△OAA’ は底辺がC、高さが r の三角形に近づきます。

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