地球を一周するロープを1m持ち上げると?
前節〔2-4 比の理論〕で比の公式がいくつか出てきました。今回はこれらの公式がどのように使われるのかを見てみましょう。その前に皆さんに問題を出します。頭の体操だと思って考えてみてください。
地球の赤道をロープで結んだとします。地球は、表面がツルツルの完全な球だとします。ロープの長さは地球の周長の約4万キロメートルです。さて、このロープを1メートルだけ持ち上げるにはどのくらいの長さのロープが必要でしょうか。もちろん、ロープは伸び縮みしないものとします。

地球の周長は約4万キロメートルもあるので、ロープを1m持ち上げるには相当の長さを継ぎ足す必要があるような気もします。実際はどうなのでしょうか。
現在の皆さんは円周率πが使えますから円周は簡単に計算できます。地球の半径を r1メートルとすると、赤道の長さは 2πr1メートルになります。半径をr2(=1)メートル増やします。

すると、
\(2π(r_1+r_2) = 2πr_1 + 2πr_2 \)(1)
となります。つまり、地球を結んだロープを1メートル持ち上げるには、ロープを 2πr2 ≒ 6.3メートルだけ継ぎ足せばよいことになります。
円周の足し算
古代では「円周の足し算」をどのように考えたか
(1) を古代の表現方法で表すと、
\(〇(r_1+r_2) = 〇(r_1) + 〇(r_2) \)(2)
となります。 〇(r1) は半径がr1の円の円周です。
アルキメデスは (2) をどのように証明したのでしょうか。
数学は、与えられた規則に従って行う団体競技や将棋などのゲームでと同じで、与えられた公理や規則以外のものは使うことはできません。使ってよいのは前節で述べた「比の規則」だけです。それでは (2) を証明しましょう。
〔円周率〕の定理より、
\(〇(r_1) : 〇(r_2) = r_1 : r_2 \)
\(〇(r_1+r_2) : 〇(r_2) = r_1+r_2 : r_2 \qquad (4)\)(3)
が成立します。次に定理〔比の和〕の特別な場合
\(A:B = a:b なら (A+B):B = (a+b):b\)
を (3) に適用すると、
\(〇(r_1)+〇(r_2) : 〇(r_2) = r_1+r_2 : r_2 \)(5)
が得られます。(4) と (5) より
\(〇(r_1+r_2) : 〇(r_2) = 〇(r_1)+〇(r_2) : 〇(r_2)\)
この比例式の右項は共に 〇(r2) です。したがって、命題〔右項の一致〕より (2) が得られます。
円と長方形の定理
現代では、円を考えるときは常に半径を基準として考えますが、古代では半径よりは直径、直径よりは円周を基準として考えました。たとえば木材を伐採するとき、木の円周は木を切り倒さなくても測ることができるからです。円周が分かれば、円の直径や半径は円周から計算できます。次は、「円は円周を底辺、半径を高さとする長方形の半分」であることを述べています。
半径が r 周長が C の円に対し次が成立する。
\(○^2(r)=\frac{1}{2}□(C,r)\)
円に内接する正n角形と外接正n角形を考えます。〔 2-3 πの源流 〕でおこなった議論より、
\(内接正n角形 < 〇^2(r) < 外接正 n角形\)
が成立し、n が大きくなると、内接正 n 角形と外接正n角形は限りなく円に近づきます。図2.5.1 は内接正n角形と円を円の半径で切り、横に並べたものです。

線分AA’は正n角形の外周で、n が大きくなると、円周 C に近づきます。hn は △AOB の高さで、n が大きくなると、円の半径 r に近づきます。並んだ n個の三角形は高さがみな hn なので、この n個の三角形の和は、右の図の直角三角形 OAA’ となります。つまり、
\(内接正n角形 = △OAA’\)
となります。内接正n角形は円に近づき、△OAA’ は底辺がC、高さが r の三角形に近づきます。
- ギリシアの三大難問「円の正方化」
- 円の正方化とは
- 円の面積と正方形の面積の関係
- 「円と正方形の面積比」の証明
- 円の足し算
- 円の面積の和
- 「円の面積の和」の証明
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