2-4. 比の等価性とは?長方形の面積比でわかる比のしくみ

じっくり 幾何
2-4. 比の等価性とは?長方形の面積比でわかる比のしくみ

 

アルキメデスが創り上げた理論は、現在では解析学と呼ばれ、代数学に属します。代数学は“数”を扱うのに対し、アルキメデスが扱った対象は図形や立体などの幾何学的対象で“数”は現れません。代数学の土台となる“掛け算”や“割り算”の代わりにアルキメデスが用いたのは 比の理論でした。現代の私たちにとって、アルキメデスの理論を理解する上でいちばんの障害となっているのがこの比の理論です。近世に入り、量は数となり、比は分数となって、ギリシアの比の理論は代数学の中に吸収されてしまいました。現在では、アルキメデスの理論を比の理論を使わずに述べなおすことができます。しかしそれでは、アルキメデスの理論の真のすばらしさや、数学がどのように発展してきたかが分からなくなってしまいます。アルキメデスが扱った比の理論は、その後の数学の発展に大きく寄与したのです。これからその様子を見ていきましょう。 本サイトでは、ユークリッドの『原論』シリーズで〔比の理論〕を詳しく解説する予定です。ここでは、アルキメデスの理論を理解するのに必要な部分だけを簡単に紹介するのにとどめます。現在の皆さんは分数をよく知っていますから、

\(( a : b) とは ( \frac{a}{b} ) のこと\)

と解釈すれば、これから述べる比の理論は理解できると思います。

2つの比が等しいとは

比の等価性

数学において最も重要な概念は、“等しい”という概念、つまり 等価性 の概念です。ユークリッドの『原論』においては、“比とは何か”についての説明はありません。比とは2つの量の間の“関係”であると述べ、あとは比の等価性の定義を形式的に述べるだけです。上で、比 a:b は分数 a/b のこと、と述べましたが、皆さんは、分数 a/b のちゃんとした定義を知っていますか。ケーキとかパイを分ける問題などで理解していると思います。しかしそのような具体的な例による説明は、分数の定義にはなっていないのです。例をいくら挙げても、“すべての分数”を尽くしているわけではないのですから。悪質な不動産屋みたいに、都合のいい例だけを見せているのかもしれません。

現代数学も『原論』と同じ方法を採っています。たとえば分数(有理数) a/b も、「これこれの規則を満たす2つの整数の組 (a, b) のこと」としか述べないのです。次に述べる比の等価性の定義は、後の数学で、分数(正確には有理数)の正式な定義に大きな影響を与えました。

2つの量 a と b が比を持つのは、a と b が同じ種類の量のときにかぎります。同じ種類の量に関しては足し算が許されます。したがって、量 a の自然数倍 na は許されます。以下では a:b と書いたときは、常に a と b は同じ種類の量とします。次は『原論』における比の等価性の定義です。

定義〔比の等価性〕
比 a:b と c:d が等しいとは、任意の自然数 n と m について次のいずれかが成り立つことである。

\((i)\ na \lt mb\ ならば\ nc \lt md\)
\((ii)\ na = mb\ ならば\ nc = md\)
\((iii)\ na \gt mb\ ならば\ nc \gt md\)

以下では、2つの比 a:b と c:d が等しいことを「a:b = c:d」で表すことにします。もちろん古代ではこのような式も、2つの量 a と b の比を a:b と表すこともありません。古代では次のように表現しました。

\(「a:b = c:d」 は 「a に対する b の比は、c に対する d の比に等しい」\)

天秤を使った直感的な説明

直観的な説明をしましょう。a, b, c, d を重さ(分銅)とします。図2.4.1 のような2つの天秤 A と B を考えます。天秤 A の左の皿には a を、右の皿には b を載せます。B の左には c を、右には d を載せます。A と B の左には同じ個数(n個)、右にも同じ個数(m個)を載せます。n と m をどのように選んでも2つの天秤が常に同じ振る舞いをするとき、比 a:b と c:d は等しいと定めたのです。

図は左右に並べて配置された2つの天秤を示しています。 	•	天秤 A(左側、緑色) 	•	支柱の上部に丸い支点があり、そこから左右に水平の吊り棒が伸びています。 	•	吊り棒の左端の皿には「a」と書かれた四角い台が乗せられ、皿の下に「a」と示す緑色の重りのシルエットがあります。 	•	吊り棒の右端の皿には「b」と書かれた小さな台が乗せられ、皿の下に「b」と示す灰色の重りのシルエットがあります。 	•	吊り棒は左側がやや下がり、右側が上がった状態を表しています。 	•	天秤 B(右側、青色) 	•	支柱や支点、吊り棒の形状は天秤 A と同じく、色が青に統一されています。 	•	吊り棒の左端の皿には「c」と書かれた円形の重りが載せられており、皿の下に「c」と示す青緑色の球体のシルエットがあります。 	•	吊り棒の右端の皿には「d」と書かれた小さな円形の重りが載せられており、皿の下に「d」と示す灰色の球体のシルエットがあります。 	•	吊り棒は左側が下がり、右側が上がる傾きで描かれています。  それぞれの天秤は、左右の重さの不均衡を示すために、お皿が傾いた状態になっています。

上では量を重さとしましたが、他の量の場合はその量を計る計測器とします。たとえば長さの場合は物差し、時間の場合は時計となります。a と b、c と d は同じ種類の量でなければなりませんが、a と c は違う種類の量でもかまいません。たとえば、a と b は長さ、c と d は面積でもかまいません。

比 a:b は分数と違って量とか数といった対象ではなく、2つの量の間の“関係”を表します。また、比に関する議論では、常に4つの量 a, b, c, d が現われ、「比 a:b が c:d と等しい」とか「比 a:b は c:d より大きい」といったことが議論されます。比の“大小関係”も、上の“等価性”のと同様に定義されます。皆さんは、分数の大小関係と同じで、

\((「a:b > c:d」) は ( \frac{a}{b} > \frac{c}{d} ) のこと\)

と理解してください。

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