現在の私たちはすべての物を数値化して考えます。したがって古代ギリシアでも当然同じだったに違いないと思いがちです。しかし、これまで見てきたように、古代ギリシアでは、長さ、面積、体積、…といったものは“数”とみなしていなかったのです。数学において、数列が重要な役割をします。1章で見たように、自然数の数列については重要な成果を得ていました。量に関しても、量の列や、量の列の和を扱っていますが、そこで用いられるのは比の理論であり、“幾何学的な手法”です。この説では「円錐の体積は同じ底面、同じ高さの円柱の 1/3 である」ことを証明します。
体積の求め方 :「量の列の和」を考える
四角錐(ピラミッド)の体積の復習
\(円錐の体積は同じ底面、同じ高さの円柱の 1/3 である\)
この定理は『原論』の第XII巻にあります。〔1-4 ピラミッドの体積〕では、四角錐の体積を求めました。そこで用いたのは 小石の数理(整数論)です。小さい直方体のブロックを積み、ピラミッドを作って、ブロックの個数を数えました。しかし、円錐の場合は直方体のブロックを積むわけにはいきません。底円の半径が順次増加する円柱を積み上げて、円錐形のピラミッドを作ることにします。すると「底円が順次増加する円柱の和」を求めなくてはなりません。直接円柱の和を計算することはできませんから、円錐と四角錐との比を考えます。そのため、四角錐(ピラミッド)も、個数ではなく「量の和」として考え直すことにします。そこでまず次を証明します。
\(四角錐の体積は同じ底面、同じ高さの直方体の 1/3 である\)
直方体、円錐、円柱の略記法
〔2-1 数と量〕で直方体に対する略記法を導入しました。復習をしておきましょう。円錐と円柱に対してはここで導入します。
\(□^3(S, h) : 底面の面積が S の長方形で、高さが h の直方体\)
\(円錐(S, h) : 底面の面積が S の円で、高さが h の円錐\)
\(円柱(S, h) : 底面の面積が S の円で、高さが h の円柱\)
以下で、直方体といったときは、直方体を示すときと、その体積を示すときとがあります。円錐、円柱についても同様です。
高さの等しい直方体の体積は、その底面の面積に比例する
長方形は、底辺をそろえることでどちらが大きいかを判定できます。直方体の場合も同様で、任意の長方形 S1, S2、自然数 n、線分 h に対し次が成立します。
\(S_1 < S_2 なら □^3(S_1, h) < □^3(S_2, h)\)
\(S_1 = S_2 なら □^3(S_1, h) = □^3(S_2, h)\)
\(n□^3(S_1, h) = □^3(nS_1, h)\)
次は、〔2-4 比の理論〕で述べた 比の等価性 の定義からすぐに得られます。証明は〔長方形の面積比〕と同様なので省略します。
高さの等しい直方体の体積は、その底面の面積に比例する。
\( □^3(S_1,h) : □^3(S_2,h) = S_1 : S_2 \)
現在の私たちにとっては、この定理は証明する必要もないほどあたりまえのことです。しかしこれは、「直方体の体積=縦×横×高さ」と定義することができたからであって、この定義に至るまでには、数学の長い歴史があるのです。つまり古代では、量 a と自然数 n との積 na は
\(a + a + … + a\)
と a を n個 合わせることで定義できたのですが、量と量との積は定義することができなかったのです。というより積を定義する必要がなかったのです。
高さの等しい円柱の体積は、その底面の面積に比例する
次に円柱を考えましょう。S が半径 r の円なら、〔2-5 円周と円の和〕の〔円と長方形〕定理より
\(S = 〇^2(r) = □( ( \frac{c}{2} ), r)\)
と、Sは同じ面積の長方形で表されます。また、そこで示した証明から次が成立します。
\(円柱(S, h) = □^3(□( ( \frac{c}{2} ), r), h)\)
この式は、「円柱の体積は、底面が円 S と同じ面積の長方形で、高さが h の直方体の体積に等しい」ことを示しています。
これより次の定理が成立します。
高さの等しい円柱の体積は、その底面の面積に比例する。
\( 円柱(S_1,h) : 円柱(S_2,h) = S_1 : S_2 \)
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