月の満ち欠けの数理
月の呼び名
月の満ち欠けの形にはいろいろな呼び名があります。三日月、十三夜、十五夜(満月、望月)、十六夜、上弦、下弦、など。本連載では、太陽・月・地球と一直線に並んだ時の月の相を朔月と呼び、その次の日を新月と呼ぶことにしています。歴史的には、月が消えてからふたたび生まれる日、つまり夕方西の空に太陽が沈んだ直後に再び姿を現した月のことを、一般に新月と呼んでいたからです。また“朔”という漢字はもとに戻るという意味もありますが、遡るという意味もありますから、最初に見えた日を1日遡るという意味でこのように呼ぶことにしました。
月齢とは
学術的には、月の相は月齢と呼ばれる実数で表されます。学術的な月齢は、前回の朔月からその日の正午 12:00 までの日数を表します。この方法だと、その日の10:00 に朔月になったとすると、月齢は 2時間= 0.08日となりますが、14:00 だと –2時間 = –0.08日と、マイナスになってしまいます。これだと初心者は扱いにくいので、本連載では深夜の 24:00 を基準として深夜月齢を考えることにしました。
日・時・分の変換
ここで、単位の“日”“時”“分”の復習をしておきます。たとえば「5日4時間32分」を“日”で表しましょう。「1時間=60分」ですから、「32分= 32/60時間= 0.533時間」。「1日=24時間」ですから、
\(5日4時間32分 = 5日4.533時間 = 5日 4.533/24 日\)
\(= 5.1889 日\)
となります。こんどは逆に 5.1889日を“時・分”に変換してみましょう。
\(5.1889日 = 5日 0.1889×24 時間 = 5日 4.5336時間\)
\(= 5日4時間 0.5336×60分 = 5日4時間 32.016分\)
と(ほとんど)もとに戻ります。
以下では、月齢は深夜月齢のこと、つまり、前回の朔月からその日の 24:00 までの経過日数を表すものとします。たとえば、月齢が 5.1889 であるとは、前回の朔月からその日の24:00 までに、5日と4時間32分が経過したことを表します。
剰余計算(正の実数)
前回の朔月から次の朔月までの期間を1朔望月といいます。
\(1朔望月 = 29.53059日\)
実は、1朔望月は平均値なのですが、しばらくは均等にこの期間で朔月が巡ってくるとして議論します。起点はなんでもよいのですが、これまでどおりグレゴリオ通日とします。グレゴリオ通日に朔月が何個入り、どのくらい余るかを考えます。〔第18回 万年カレンダー〕では、自然数を自然数で割った余り(剰余)を考えました。これを正の実数に拡張します。
a と b を正の実数とします。すると次を満たす非負整数 n と r が存在します。
\(a = nb + r, 0 ≦ r < b \)(1)
n を、a を b で割った商、r を余り(剰余)といいます。n を非負整数としたのは、a < b のとき n = 0 となるからです。このとき r=a です。
長さ a と b の2本のロープを考えます。式 (1) は、ロープ a からロープ b が n本とれ、r 余ることを意味します。a=5.8, b=1.1 としましょう。
\(5.8 / 1.1 = 5.272727 ・・・\)
\(5.8 = 5.272727 ・・・ × 1.1 = 5 × 1.1 + 0.272727 × 1.1\)
\(= 5 × 1.1 + 0.2999997\)
となります。つまり、長さ 5.8 のロープから長さ 1.1 のロープが5本取れ、0.3 余るということになります。上の計算で余りが 0.299997 となったのは、5.8/1.1 の計算結果の小数部をあるところで四捨五入したためです。関数電卓などで計算する場合は、計算結果の 5.2727… から整数部の 5 を引いて、その結果に除数 1.1 を掛けると 0.3 が得られるものが多いと思いますが、こういった計算に誤差はつきものだと考えたほうがよいと思います。
- 月齢の計算
- グレゴリオ通日と朔望月
- 2030年3月3日の月齢
- 1朔望月の変動
- 天球モデル
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