日本語の“こよみ”とは「日を数える」という意味です。この言葉が示すように、人類は太古の昔から日を数え、暦を用いていました。数学の発明は、農耕の発生とともに生まれた経済の発達が要因の一つですが、天文学(占星術)も一役買っています。また、古代では占星術は暦と一体でした。古代の人々は天体を観測することによって“数”の概念を獲得していったのです。今回は暦に現れる分数近似と、「ディオファントス近似」について解説します。
天文学に必要な分数・小数の概念
古代の人々は 365日ごとに季節が繰り返されることに気がつきましたが、正確には1年は 365日ではありません。満月から次の満月まで約30日ですが、これも正確な1ヵ月の日数ではありません。同様に1年は、正確に12回の朔望月ではないのです。これらを扱うには分数、あるいは小数の概念が必要です。バビロニア人は小数の概念を、エジプト人は分数の概念を獲得しましたが、これらの概念を得るまでには何百年も、おそらく千年以上もの年月を必要としたと思われます。しかし、小数や分数の概念を得ていたとしても、これらを使いこなせていたわけではありません。これらの概念が使いこなせるようになったのは、近世に入って現代数学が発達してからです。以下では、現代数学を使って古代の暦がどのように作られたかを見てみましょう。現代数学といっても、ごく初等的な整数論ですから、中学生程度の知識があれば理解できると思います。
この先で扱う内容
- ディオファントス近似とは
- 小数部の処理
- 分数の変形規則
- √2の分数近似
- 近似値の上界・下界
- 古代の暦に現れる分数近似
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