第7回 緯度による違い: 夏はなぜ暑いのか?

傾斜角、観測点の緯度を図で確認しよう

太古の昔から、人びとは気候が太陽に大きく関係していることを知っていました。北へ行けば行くほど、太陽の高度は低く気候は寒くなります。古代エジプトのファラオは、南へ行けば太陽が真上に来ることを、さらに南へ行くと太陽は北の空を通ることを知っていました。ここでは、緯度の違いによって、太陽の高度と動きがどのように変化するのかを見てみましょう。

日周運動の図

図1-1 は〔第6回 太陽の日周運動〕で述べた日周運動の図を子午線で切断したものです。D は夏至のときの太陽、R は春分のときの太陽、C は冬至のときの太陽です。D, R, C は子午線上にあるので 12:00 のときのものです。秋分の日は春分の日と同じなので、以下では秋分の日は言及しません。τ(タウ)は傾斜角、τ = 23.4°で、φ は観測地点の緯度です。

太陽の日周運動:子午線で切断した図

地軸を立てた地球の図

図1-2 は地軸を立てた地球です。NS は地軸、D’D は夏至の日の公転面、R’R は赤道、C’C は冬至の日の公転面です。P は観測者ですが、位置は任意です。∠POR = φ です。

地軸を立てた地球の図

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緯度によって太陽の動きはどのように変わるか?

観測者が赤道にいる時

観測地点の緯度、φ の値による太陽の動きの違いを見てみましょう。図2 は赤道における太陽の動きです。つまり北緯 0°、φ = 0°です。日の出は東の空から垂直に上がり、日の入りは西の空に垂直に沈みます。春分の日には太陽は真上にきます。これを天頂通過といいます。赤道上の国では、太陽光線は春分の日あたりが最もが強く、夏至や冬至のあたりが最も弱くなります。

太陽の動き:緯度による違い(赤道)

観測者が北回帰線にいる時

北緯τ度の緯線を北回帰線、南緯τ度の緯線を南回帰線といいます。図3 は観測者が北回帰線上にいるとき、すなわち φ = τ のときです。夏至の日には太陽は天頂通過します。北回帰線と南回帰線の間を熱帯地方といいます。熱帯地方では天頂通過が起きますが、北回帰線より北の地域や、南回帰線より南の地域では太陽の天頂通過は起こりません。

太陽の動き:緯度による違い(北回帰線)

観測者が北極にいる時

北緯 90 – τ より北の地域を北極圏といいます。図4 は観測者が北極にいるときです。北極では夏至の日、太陽は迎角 τ の円を描き沈むことはありません。円は次第に地平線に近づき、秋分の日には地平線すれすれになり、秋分の日をすぎると長い夜の日が続きます。太陽が地平線あたりにあって、決して明けることがなく薄暗く長く続く夜を白夜といいます。逆に冬季の、昼間であっても太陽が昇らず薄暗い状態を極夜といいます。

太陽の動き:緯度による違い(北極)

観測者が北緯90-τにいる時

図5 は北緯 90 – τ の地点です。ここでは夏至の日には太陽は一日中空にありますが、その後しだいに高度を下げ、秋分の日には半日だけ姿を現します。その後昼間の時間が次第に短くなり、冬至の日には正午に一瞬姿を現すだけでその他は地平線下に沈みます。白夜があるのは北極圏と南極圏だけです。

太陽の動き:緯度による違い(北緯90°-τ)

観測者が南半球にいる時

これまで太陽の日周運動について述べましたが、星々の日周運動についても同様です。南半球については、北半球と逆になる現象が多いのでここで簡単に述べておきます。

図6 は南半球の一般的な図です。東西南北が北半球とは逆に描かれています。南の空には天の南極があり、回転軸はここを通っています。東の空を見ると、右が南で左が北です。太陽や星々は右下から左上に向かって昇ります。もっとも南寄りから太陽が昇る日が(北半球の)冬至で、もっとも北よりから太陽が昇る日が夏至です。つまり、南半球では最も日が長く暖かいのが冬至の日なのです。

太陽の動き:緯度による違い(南半球)

なぜ夏は暑いのか?

日照時間の違い

夏暑く冬寒いのはどうしてでしょうか。太陽を回る軌道は実は円ではなく楕円軌道で、地球が太陽にもっとも近づくのは冬で、太陽からもっとも離れるのは夏です。ですから、「夏が暑いのは太陽が地球に近いからだ」というのは間違いです。季節による気温の違いは実際は複雑なのですが、主な理由として日照時間の違いと太陽光と地面とのなす角度の違いがあります。

日照時間の違いを見てみましょう。図7で夏至の日と冬至の日の太陽の軌跡を表わす小円は、同じ大きさなのですが、夏と冬では昼間の部分の大きさが違います

日照時間の違い 夏至 冬至

太陽光の角度の違い

次に太陽光の角度の違いを見てみましょう。図8 では太陽が地面を照らし、同じ大きさの板が地面に影を落としています。太陽光は板に垂直にあたっています。図8-(a) は冬の日、図8-(b) は夏の日です。板に当たる太陽エネルギーは同じですが、冬は夏より広く引き伸ばされています。したがって、夏より冬のほうが単位面積あたりに受ける太陽エネルギーは少なくなります

太陽の角度の違い

単位面積あたりに受ける太陽エネルギー

では、単位面積あたりに受ける太陽エネルギーは夏と冬でどれぐらい変化するのでしょうか。ここからは数学の問題となります。
図9で、R は赤道、τ は傾斜角( τ = 23.4度 )です。φ は観測者の緯度、D は夏至の日の太陽、C は冬至の日の太陽です。

観測者の緯度と傾斜角

したがって

∠DOS = 90°- φ + τ
∠COS = 90°- φ- τ

となります。
図10 では、板 AB に太陽光線が垂直にあたり、影 BC を作っています。

地面に受ける太陽エネルギー

太陽と地面のなす角を θ、地面が単位面積あたりに受ける太陽エネルギーの割合を E とすると、

E = AB / BC = sin⁡θ

となります。

まず、東京の夏と冬を比較してみましょう。東京の緯度は約 35 度( φ = 35 )ですから

∠DOS = 78.4,  ∠COS = 31.6

したがって、東京の夏と冬の太陽エネルギーは

夏:E = sin⁡ 78.4 = 0.98
冬:E = sin⁡ 31.6 = 0.524

となります。したがって、冬至の日と夏至の日の太陽エネルギーの比は、0.524 / 0.98 = 0.529 となります。冬の日の日差しは夏の日の約半分ということになります。

次に赤道直下を見てみましょう。赤道では春分の日の太陽エネルギーは 1 です。夏至の日は、

E = sin⁡ 90 – τ  = 0.92

となります。したがって、熱帯地方では1年中日差しは強く、日本の夏至ごろの暑さが続きます。

今回のお話では、単位面積あたりに受ける太陽エネルギーが夏と冬でどのように変化するか、その緯度による違いを、少し数学の計算を交えながらご紹介しました。

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