第3回 地球と日周運動:腕時計で方位を知る方法

天文学の始まり

古代の人々にとって、天体はでありまた正確な時計でもありました。1日は日の出とともに始まり、日の入りによって終わります。夜空の星々の動きを見れば、時が一刻一刻と正確に刻まれていると認識されるようになります。月の形の変化を見れば、1ヵ月の経過が分かります。月日の経過とともに季節が移り替わっていき、ふたたび同じ季節がおとずれます。古代の人々も天体を観察し、太陽の運行がいろいろな自然現象と因果関係があることに気づいていました。これこそ天文学の始まりであり、科学の始まりでもありました。これから何回かにわたり古代の天文学のお話をするのですが、解説には現代の用語を用います。まずはその説明から始めましょう。

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球の切断面

大円と小円

ボールやスイカなどのを思い浮かべてください。球を平面で切断すると、切り口はとなります。“円”といった場合、円周を意味する場合と円周の内部を含めた円盤を意味する場合とがあります。球の中心を通る平面で切断したとき切断面を大円といい、中心を通らない切断面を小円といいます。小円の中心に立てた円の垂線は必ず球の中心を通ります。球の中心を通る直線を軸といい、軸と球との交点を極といいます(図1) 。

大円と小円

AとBが極の場合、それ以外の場合

A と B を球上の任意の2点とします。A と B がある軸の2つの極の場合、A と B を結ぶ大円は無数にありますが(図2)、それ以外の場合、A と B を結ぶ大円はただ一つだけです(図3)。

大円
大円

この大円は A と B によって2つの弧に分けられますが、その一方の弧がA から B への最短路となります。A と B が地球上の2点の時、A から B へ行く最短路は、紙に印刷された地図上でA から B へ引いた直線であるとは限りません。

地球の極、経線と緯線

こんどは地球儀を思い浮かべてください(図4)。地球の回転軸を自転軸あるいは地軸といいます。自転軸の極が北極南極です。地軸と垂直な大円が赤道です。北極と南極を結ぶ大円が経線です。地軸に垂直な円を緯線といいます。緯線は赤道を除いて小円です。

経線と緯線

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星々が輝く夜空を想像してみよう

天球とは何か

広い平原で夜空を眺めていると思ってください。あるいはプラネタリウムの席に座っていると想像してもいいでしょう。夜空はまるで大きな半球のよう見えませんか。プラネタリウムの天井と思ってもよいでしょう(図5)。Oにあなた(観測者)がいます。古代の人々は、星々はこの大きな球に貼りついていて、球が地球のまわりを回転していると考えていました。この仮想的な球を天球といいます。地面を延長するとこの天球と交わり地平線となります。

この連載ではたくさん図が出てきます。そこでは次の記号を用います。

T: 天頂、H: 北極星、N: 北、E: 東、S: 南、W: 西

あなたのいる真上が天頂 T で、北の空には北極星 H が輝いています。古代では地球は不動だとし、天球が OH を軸として回転していると考えられていました。この様子をもう少し詳しく見てみましょう。

日周運動とは何か

図5 で、あなたは北を向いて北極星を見ていると考えてください。しばらく観察していると、北の星々は北極星を中心に円を描きます(図6)。この円の中心を天の北極といいます。現在では天の北極には北極星がありますが、古代エジプトやバビロニアの時代、北極星は天の北極にはありませんでしたが、今回は天の北極に北極星があるものとしてお話します。

地球と日周運動

図7 は南の空です。北の空では反時計回りに回転し、南の空では時計回りに回転します。星々は天球に貼りついていて、あたかも天球自体が OH を軸として回転しているように見えます。昼間は星々は見えませんが、代わりに太陽が南の空を回転します。このようにして、天球は1日に1回転します。これを日周運動といいます。

星々は1時間に何度回転するか計算してみましょう。1日にちょうど1回転ですから360度です。1日は24時間ですから、1時間当たり 360度 ÷ 24 = 15度となります。

地球と日周運動

【天体の豆知識】腕時計があれば方位がわかる

皆さんは、「方位磁石がないとき、時計を使って方位を知る方法」、あるいは「時計がないとき、方位磁石を使って時間を知る方法」を知っていますか。腕時計は持っていて、方位磁石は持っていなかったとしましょう。時計は360度を12等分しています。つまり1時間の目盛りと目盛りの間隔は30度です。皆さんは、12:00 に太陽が南中することを知っていますね。例えば現在、午前10時だったとしましょう。あと2時間で太陽は南中します。太陽は1時間に15度進むので、現在の太陽の方向から 30度進んだところが真南です。時計の10時を太陽の方角に向けると、10時と12時の半分、11時が示す方向が真南です。一般には次のようにします。現在の太陽の方向に時計の短針を向けます。12時を示す方向と短針が示す方向の2等分線が真南です。逆に、太陽は1時間に15度進むことから、現在の太陽の方位が分かれば現在の時間も分かります。

腕時計で方位がわかる

実は、いま述べた方法は古代エジプトやバビロニアで実際に行われていたことです。エジプトの壁画には、星の位置で時間を測る“星時計”が描かれています。エジプトでは1日を24時間としていましたし、バビロニアでは1日は12時間でした。

腕時計は現在のもので、古代にはありません。しかし現代の私たちが、上で述べた方法で、腕時計を使って簡単に方位を見つけることができるのは、古代の人々が1日を24時間と定めたからなのです。

この連載の第一回はこちら▼
第1回 科学のはじまり:天文学の源流「バビロニア文明」

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