ホルスの目 とは
ホルスの目とは何か? 神話と数学が交差する神秘のシンボル
古代エジプトの壁画や装飾品に頻繁に登場する「ホルスの目」。
それは単なる宗教的な象徴ではなく、「守護」や「癒し」、「再生」の力を宿すと信じられ、魔除けや護符として人々に広く用いられてきました。
一方で、ホルスの目は数学の世界にも深く関わっており、その形は1/2から1/64までの分数を表す記号として、古代エジプトの数学体系に組み込まれていました。
本記事では、ホルスの目にまつわる神話的な背景から、エジプト分数との関係、そして再生と完全性の象徴としての意味までを、わかりやすく解説していきます。
ホルスの目とは
ホルスの目は、古代エジプトの壁画や装飾によく見られる、神秘的な力を宿したシンボルです。守護・治癒・再生の象徴として信じられ、魔除けや護符として古くから用いられてきました。
さらに、エジプトの数学では分数の概念を表す記号としても使われており、神秘と実用の両面をあわせ持つ存在です。

ホルスの目の神話的背景
古代エジプトの天空神ホルスとは?
ホルスは、古代エジプト神話に登場する天空の神で、通常はハヤブサの姿で描かれます。
彼はオシリスとイシスの子であり、エジプト神話でも特に重要な存在です。
神話によれば、父オシリスは弟のセトに殺害されてしまいます。ホルスは成長後、父の仇であるセトと戦い、これに勝利。上下エジプトを統一する正統な王として即位しました。

オシリス神話と「ホルスの目」の誕生
ホルスの父であるオシリスは、古代エジプトで人々に慕われる賢明な王として統治していました。しかし、彼の弟セトはその地位をねたみ、ついにオシリスを殺害して王位を奪おうと企てます。
やがて息子のホルスは成長し、父の仇を討つためにセトと戦います。その壮絶な戦いの中で、ホルスはセトによって片目を引き裂かれてしまうのです。傷ついたホルスの目は、知恵と月の神であるトトによって癒され、再び元の形を取り戻します。
この神話から、「ホルスの目」は癒しや再生の象徴として古代エジプトで広く信仰されるようになりました。
太陽と月、2つの「ホルスの目」
ホルスの目には右目と左目があり、
- 右目は太陽の象徴
- 左目は月の象徴とされています。
特に、左目は「ウジャトの目(ウジャト・アイ)」と呼ばれ、戦いで損なわれた後に癒された目として、守護・治癒・再生の力を象徴するものとなりました。この目はエジプトの王たちや民衆にとって、災いから身を守る「魔除け」として大切にされ、護符や装飾品にも多く用いられました。
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ホルスの目とエジプト分数
「1より小さい数」をどう表すか
私たちは「半分(half)」や「四分の一(quarter)」といった言葉で、1より小さい数(分数)を表します。これは現代の多くの言語にも共通して見られる表現です。
では、古代エジプトではどうだったのでしょうか?
エジプトでは、半分、四半分、八分、十六分、三十二分、六十四分までありました。倍々に小さくなる分数が特別な意味を持ち、それぞれ独立した記号で表されていました。
日本語にも「八分」や「十六分」という表現があり、「八分の一」「十六分の一」という意味で使われます。日本語では「八分」のように「数詞+分」の形で表しますが、古代エジプトではこれらは単一の概念で、それぞれが一つの記号で表されていました。
「ホルスの目」と分数の関係
実は、これらの分数はホルスの目のパーツに対応しているとされます。
たとえば…
- 目の瞳が「1/4」
- 眉が「1/8」
- 涙のような部分が「1/32」…という具合に、 ホルスの目を構成する各要素が、それぞれの分数単位を象徴していたのです。
このようにホルスの目は、単なる神話的なシンボルではなく、数学的な知識や数の世界観とも深く結びついていたと考えられています。

ホルスの目のパーツは、それぞれが以下の分数を意味しています。
- 1/2
- 1/4
- 1/8
- 1/16
- 1/32
- 1/64
これらすべてを合計すると、64分の63になります。つまり、1にはわずかに届かない“不完全な数”なのです。この「64分の1足りない目」は、ホルスがセトとの戦いで傷ついた左目を象徴していると考えられています。
同時に、それをトト神が回復させたという神話により、この目は再生・癒し・完全性を取り戻す過程の象徴ともなりました。
古代エジプト人は1より小さい数としてホルスの目、つまり2進分数を考え出しました。古代エジプトの人々は「数」をどのように扱っていたのでしょうか。以下の記事で詳しく解説しています▼
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