アレクサンドリア図書館長としてのエラトステネス

エラトステネスは、現在のリビアにあたるキュレネで生まれました。若い頃は学問の都アテナイで学び、その後、プトレマイオス王朝の王子の家庭教師としてエジプトのアレクサンドリアに招かれます。

やがて、エジプトの文化・学問の中心地であったアレクサンドリア図書館の館長に就任し、生涯をその地で過ごしました。

この図書館は、当時世界最大の蔵書を誇り、多くの知識人が集まる古代世界随一の学術研究機関でもありました。

博識ゆえの「ベータ（β）」

エラトステネスは、天文学、地理学、数学、詩学、文献学など、あらゆる分野に通じていました。

その知識の幅広さは当時から知られており、同時代の天才アルキメデスから手紙をもらっていたことからも、一流の学者として認められていたことがわかります。

しかし、あまりに多くの分野に手を出したため、どの分野でも“第一人者”とは言いにくかったようです。

そのため、彼は「ベータ（β）」――ギリシア文字で“2番目”を意味する言葉――というあだ名で呼ばれていました。この愛称には、「どの分野でもトップではないかもしれないが、あらゆる学問において優れた“万能の知識人”」という敬意が込められていたとされています。

エラトステネス と 地球の大きさ ──影から導き出した地球の周長

アレクサンドリア図書館の館長だったエラトステネスは、ある日、古代エジプトの年中行事が書かれたパピルス文書を読んでいました。その中に、ナイル川上流の町シエネ（現在のアスワン）では、夏至の日の正午に井戸の底に太陽が映る、という記述を見つけます。

これはつまり、夏至の日の正午、シエネでは太陽が真上に来ることを意味しています。

しかし同じ時間、アレクサンドリアでは物体に影ができていたのです。つまり、太陽がわずかに傾いて見えるということです。

この違いから、エラトステネスは「地球が丸いなら、この影の角度から地球の大きさが計算できるはずだ」と考えました。

エラトステネスは、地球の周囲の長さを測定したと伝えられています。伝記などによると次のように言われています。

影の角度と距離から周長を求める

エラトステネスは、夏至の日の正午に、アレクサンドリアで垂直に立てた棒の影の長さを測定しました。

その結果、太陽光と棒のなす角度は7度12分（＝7.2度）であることがわかりました。地球は360度なので、7.2度はその1/50にあたります。

つまり、アレクサンドリアとシエネの距離が地球の1/50に相当するなら、距離×50で地球の全周が求められるというわけです。

地球の周長を計算する

エラトステネスは、測量士に命じて両都市間の距離を測定させました。その結果はおよそ5000スタディオン。

したがって、地球の周囲は：

5000スタディオン × 50 = 250,000スタディオン

となります。

当時のスタディオン（距離の単位）には諸説ありますが、仮に1スタディオン ≒ 160メートルとすると、

250,000 × 160 m ＝ 40,000,000 m（＝約4万キロメートル）

これは、現代の地球の周長（約40,075km）と驚くほど近い数値です。

ただし、この測量の伝承には、いくつかの疑問点が指摘されています。

以下の記事ではエラトステネスの時代について詳しく調べ、深掘りしています▼

エラトステネスのふるい──素数を見つける古代のアルゴリズム

エラトステネスのふるいは、一度にたくさんの素数を効率よく見つけるための方法として知られています。

この手法は、古代ギリシアの数学者エラトステネスが考案したとされ、現代でも基本的なアルゴリズムとして活用されています。

そもそも素数とは、1と自分自身以外に約数を持たない自然数のことです（例：2、3、5、7など）。

「ふるい」という名のとおり、この方法では合成数（素数でない数）を次々とふるい落としていくことで、残った数がすべて素数になります。

古代に生まれたこの単純かつ効果的な手法は、現在の数論教育やプログラミング演習などにも広く応用されています。

エラトステネスのふるいに関する解説はこちら▼
[知る・調べる – 用語 ]エラトステネスのふるい

素数に関する解説はこちら▼
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