ヒエログリフ(聖刻文字) とは
ヒエログリフって、どんなしくみ?誰でも読めたの?数字の表し方は?
古代エジプトの壁画や墓に残されたヒエログリフ(神聖文字)は、文字でありながら、絵のような美しさを持つ不思議な記号です。
この記事では、
- ヒエログリフの基本構造(音・意味)
- 数字の表現方法
- 誰が使っていたか
- どうやって解読されたのか(ロゼッタストーンの発見)
といったテーマを、歴史や図解も交えて、初心者にもわかりやすく解説します。
ヒエログリフとは?意味と特徴をわかりやすく解説
ヒエログリフ(聖刻文字、神聖文字)とは、古代エジプトで使用されていた象形文字のことです。
古代エジプト人は、言葉には魔力が宿ると信じており、ヒエログリフを「神の言葉」と呼んで大切にしていました。
このヒエログリフには、標準的な24個の文字があり、それぞれが1つの音を表現しています。
ただし、古代エジプト語の音と現代英語などのアルファベットの音は完全に一致するわけではありません。
そのため、現代のアルファベットに対応させる際は、最も近い音をあてはめる形になります(対応は研究者によって若干異なる場合もあります)。

ヒエログリフは表音文字と表語文字の両方の性質をもつ
1つの文字が特定の「音」を表すものを表音文字と呼びます。
現代の日本語で使われるひらがなやカタカナは、この表音文字の代表例です。
一方、文字そのものが「意味」を持つものを表語文字と呼びます。
漢字がその典型であり、ひとつの漢字が独立した意味を表しています。
ヒエログリフは、この両方の性質を併せ持つと考えられています。
つまり、「音」だけを表す文字と、文字そのものが「意味」を伝える文字の両方が存在していたのです。
ヒエログリフで数字を表す方法とは?
古代エジプトでは、
一、十、百、千、万、十万、百万、千万を、それぞれ異なるヒエログリフの記号で表していました。
それぞれの記号1つが、1つの数を意味します。

たとえば──
- 花のマーク:千
- 縄のマーク:百
- 取っ手のマーク:十
- 棒のマーク:一
といった具合です。
たとえば「3215」を表す場合、
花を3つ、縄を2つ、取っ手を1つ、棒を5本並べて表現します。

ヒエログリフは、単なる情報伝達の手段ではありませんでした。
その文字自体が芸術作品のように美しく、装飾的な意味合いも持っていたのです。
また、古代エジプトに限らず、
古代の世界では「文字」や「数字」には神秘的な魔力が宿ると信じられていました。
ヒエログリフは、
読み書きができない民衆にも比較的わかりやすい文字体系でした。
たとえば、
「棒」「取っ手」「縄」という基本的な3種類の記号を覚えれば、
1から999までの数を表現できる仕組みになっていました。
さらに、ヒエログリフは左から右にも、右から左にも書くことが可能です。
例えば「23」を表すとき──
- ∩∩||| と書いても、
- |||∩∩ と書いても、
どちらでも同じ意味になります。
ただし、数字「3」(|||)と「20」(∩∩)はまとめて一緒に書くのが基本でした。
とはいえ、
ヒエログリフは美術的には優れていても、実用にはあまり向いていませんでした。
そのため、実務的な用途──
たとえば数学書や経済文書では、より簡略化された**ヒエラティック(神官文字)**が使われるようになりました。
ピラミッド解読の歴史とヒエログリフ
古代エジプトでは、
紀元前3000年ごろから紀元後394年までの間、ヒエログリフが使われていました。
その後、ヒエログリフは使われなくなり、
読み方や書き方は長い間忘れ去られていました。
ヒエログリフ解読のきっかけとなったのは、
1799年にエジプトで発見された「ロゼッタストーン」と呼ばれる石碑です。
この石碑は、ナポレオンのエジプト遠征の際に発見され、
エジプト研究の専門家たちに送り届けられました。
ロゼッタストーンは、ヒエログリフの研究に大きな役割を果たしました。
その後、イギリスの物理学者トーマス・ヤング、
フランスの言語学者ジャン・フランソワ・シャンポリオンらによって研究が続けられ、
1822年にとうとう解読されました。
ヒエログリフの解読により、
ピラミッド内部やお墓、神殿の壁画、パピルスなどに書かれた、
多くの情報が得られるようになったのです。
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文字の発明
紀元前3200年ごろ、シュメールの遺跡から、
**古拙文字(こせつもじ)**と呼ばれる楔形文字が発掘されています。
また、古代エジプトのヒエログリフには、
シュメール文明から何らかの影響を受けた可能性も考えられています。
まとめ
ヒエログリフは、古代エジプトで「神の言葉」として用いられた特別な文字です。
単なる音だけでなく、意味も持つ文字があり、象形文字として美術的にも優れていました。
数字も独自の方法で表され、民衆にもわかりやすい構成を持ちながら、
数学書や経済文書などの実用には、さらに簡略化された神官文字(ヒエラティック)が使われました。
ヒエログリフは長い間その読み方が失われていましたが、
1799年に発見されたロゼッタストーンをきっかけに研究が進み、
1822年に解読されることで、ピラミッドやお墓、神殿に刻まれた多くの情報が明らかになりました。
また、文字の発明はシュメール文明にさかのぼり、
エジプトのヒエログリフにもシュメールからの影響があった可能性が考えられています。