プトレマイオス とは?
天動説を築いた古代アレクサンドリアの学者
プトレマイオス(英語名:トレミー)は、2世紀頃のヘレニズム後期、ローマ支配下のエジプト・アレクサンドリアで活躍した学者です。
彼は天文学、地理学、数学、占星術にまたがる多くの分野で業績を残し、その影響は中世からルネサンス期にかけてのヨーロッパ・イスラーム世界にも広く及びました。
最も有名な著作は、天文学書『アルマゲスト』と地理書『ゲオグラフィア(地理学)』です。特に『アルマゲスト』では、地球を宇宙の中心とする「天動説」モデルを体系的に構築し、約1400年にわたり天文学の主流理論となりました。
また、数学では「トレミーの定理」に名を残し、今日でもその名は知られています。
ただし、プトレマイオスの個人に関する史料は極めて少なく、著作を通じてしか彼の姿を知ることはできません。
時代背景 プトレマイオス が活躍した時代はどんな時代?
プトレマイオスが生きたのは、ローマ帝国が地中海世界を支配していた時代です。
この時期、アレクサンドリアは依然としてヘレニズム文化と学問の一大中心地であり、各地から学者や文人が集まる知の拠点でした。
多文化が交差し、知的ネットワークの中で、プトレマイオスは古代の知を集大成し、後世に橋渡しする役割を果たしたのです。
プトレマイオスの地球中心説──1400年支配した宇宙モデル
プトレマイオスは、天文学・地理学・数学の分野で数多くの業績を残した古代ギリシアの学者です。彼の著作は、後の西洋世界やイスラム世界において長く参照され、科学的探究の出発点となりました。
代表作である『アルマゲスト』は、天文学に関する13巻におよぶ大著で、彼の天体運行モデルが詳しく記されています。この書の中でプトレマイオスは、地球を宇宙の中心とする「地球中心説(天動説)」を体系化しました。
このモデルでは、太陽・月・惑星・恒星がすべて地球のまわりを円軌道で回っているとされます。
しかし、観測上、惑星は時折“逆行”するなど複雑な動きを見せます。これを説明するために、プトレマイオスは「周転円」や「従円」といった補助円の概念を導入しました。
この精巧なモデルは、見かけ上の天体の動きをかなり正確に再現することができ、多くの学者に受け入れられました。
この天動説の宇宙観は、やがて16世紀のコペルニクスによる地動説が定着するまで、約1400年間にわたり西洋の多くの学者に支持されました。

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ガリレオ裁判の真相[vol.3]-天動説と地動説
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プトレマイオスの地理学──地図製作に革命をもたらした座標の発想
プトレマイオスは天文学だけでなく、地理学の分野にも大きな功績を残しています。
彼の著作『地理学』では、世界の地理情報を体系的に整理し、土地の位置を「緯度」と「経度」で表す座標系を導入しました。この座標による位置の特定法は、近代地図製作の基盤となり、後世のカルトグラフィー(地図学)に多大な影響を与えました。
トレミーの定理と三角法の先駆け
プトレマイオスの名を冠する「トレミーの定理」は、平面幾何学における重要な定理のひとつです。この定理は、円に内接する四辺形において、「対辺の積の和が、対角線の積に等しくなる」という関係を示します。
具体的に:円に内接する四角形 ABCD に対し、
AC × BD = AB × CD + AD × BC
この定理は、天文学書『アルマゲスト』の中で示されており、円弧上の天体の角度や位置を計算する際に用いられました。
さらにプトレマイオスは、弦表を用いた計算を行い、三角法(後の三角関数)の基礎を築いた人物としても知られています。
これは、後のアラビア数学やヨーロッパ数学に受け継がれ、三角関数の発展につながる大きな一歩となりました。
この定理は、著作『アルマゲスト』の中で証明されており、円周上にある天体の位置や角度を計算する際に利用されました。また、プトレマイオスは三角関数の基礎を築いた人としても有名です。
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【知る・調べる – 定理】トレミーの定理
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