「天文学のため」という見立て
60が選ばれた理由には、いくつもの説があります。ポゥじいはそのうちのひとつを採っています。
ポゥじい博士の見立て時計と角度が、そもそもどうして60進法になったのか。「いろいろな民族がまじりあった商業活動のため」という意見もあるがの。わしは、天文学のためだと思うておる。
一周を360度としたのは、1年をおよそ360日として扱っておったからじゃ。すると太陽は1日に約1度ずつ進む。1日を24時間、1時間を60分とすれば、1440分 ÷ 360度 = 4分。星が1度動くのに、ちょうど4分かかるという勘定になる。星の動きそのものが、正確な時計になっておったんじゃよ。
古代の天文学者は、時間や角度だけでなく、計算に使う数そのものを60進法で扱っておった。60進法の小数で、平方根まで計算しておったのじゃ。
バビロニアの数体系は本当に「純粋な60進法」だったのか
バビロニアの記数法は、一般には「60を底とする位取り記数法」に分類されます。1から59までのひとけたを、10のまとまりと1のまとまりを組にして書き表す。そういう仕組みの60進法だ、という見方です。
ポゥじい博士の見立て計算の仕方、とくに掛け算を詳しく見ると、バビロニアの数体系は純然たる60進法とは微妙に異なるんじゃよ。1を表す記号(小さな円錐形)は10個集まると10を表す記号(小さな球形)になり、10を表す記号は6個集まって60を表す記号(大きな円錐形)になる……という具合に、実際には「10個で繰り上がる部分」と「6個で繰り上がる部分」が組み合わさった体系になっておる。これを「6・10進法」と呼ぶこともできるじゃろう。
従来の見方では、この2種類の記号をワンセットとして「1から59までの数」を表すものと解釈するが、実際に足し算を行う手順を見ると、10個集まったら繰り上げ、6個集まったら繰り上げという、10進法とほとんど同じ手順で計算が進むんじゃ。この意味で、バビロニアの数体系は単純な60進法というより「6・10進数」と呼んだほうが実態に近いとわしは見ておるんじゃよ。


「位取り方式」はメソポタミアで生まれていた
いま私たちが使っている10進数は「位取り方式位取り方式/非位取り方式数字を書く位置によって位取りが決まる「位取り方式」と、位ごとに違う記号を用いる「非位取り方式」という、記数法の2つの型。」と呼ばれる記数法で、インドで生まれ、アラビアを経て12世紀にヨーロッパへ伝わりました。ただし位取りという仕組みそのものは、それよりずっと前、メソポタミアですでに使われていました。10進ではなく、60進の形でです。
そのはじまりは「計算玉」と呼ばれる粘土のトークンだったと考えられています。小さな円錐形が1、小さな球形が10、大きな円錐形が60というように、形によって表す数が決まっていました。ただしこれは、出土した粘土の玉から組み立てられた仮説です。そのとおりの道筋をたどったことが確かめられているわけではありません。
ポゥじい博士の見立てもともと計算玉は、数えるものごとに形が違っておった。ヒツジにはヒツジの玉、壺には壺の玉じゃ。それが長い年月のうちに、ヒツジを数えるのも壺を数えるのも同じ玉でよいのではないか、と気づく。ここで「数」と「数えるもの」が切り離されたのじゃよ。
計算玉を並べるときは、1の位、10の位、60の位、600の位、3600の位……と、位ごとに置く玉の種類が決まっておった。10の位や600の位があることからわかるとおり、これは計算玉の段階の並べ方じゃ。のちに楔形文字で書かれる60進法では、位の重みは1・60・3600と60倍ずつになる。
桁数の大きい計算を何度もするうちに、位の順に並べたほうが効率がよく、間違いも少ないと気がついたのじゃろう。すると粘土板に書くときも、大きい位から小さい位へと並びが決まってくる。置く場所によって同じ記号が違う値を表す「位取り方式」は、こうして生まれたとわしは見ておるんじゃよ。
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ポゥじい現在では 60進数は、角度と時間だけでしか用いられていないが、バビロニアやアラビア数学では普通の数を表す記数法として、天文学や方程式論で用いられてきた。



