
楕円とは、わずかにつぶれた円のことです。
見た目の違いはごくわずかなのに、その難しさは天と地ほど違います。円軌道でさえあれほど大変だったのに——「楕円」になった途端、当時の多くの数学者たちが「魔の山」の前で立ち往生しました。円と違い、楕円では距離も速度も刻一刻と変わり続けます。止まった図形を調べるための古い数学では、この「流れ続ける一瞬」を捉えることができません。ニュートンが頼りにしたのは、消えゆく寸前の量を捉える「顕微鏡」のような、新しい考え方でした。
本書は、ニュートンが楕円軌道の謎を解き明かすまでの論理を、対話形式で最初から最後まで追いかける数学史読み物です。
山場は第4章の「主定理」。第2章で手に入れた「消えゆく比」、第3章で自力で証明した「5つの武器」——バラバラだった道具が最後の証明で一つに合体し、式が削ぎ落とされて、最後に残るのはたった一つ。楕円軌道を回る惑星が受ける力は、距離の2乗に逆比例する。ガリレオの落下の法則、ケプラーの楕円軌道——それまでバラバラだった発見が、ひとつの引力の法則のもとで「必然」として組み合わさる瞬間に立ち会えます。
やさしい見た目とは裏腹に、中身は本格派です。逸話やあらすじで『プリンキピア』を「眺める」のではなく、その証明を一歩一歩着実に、自分の頭でたどる——シリーズの中でもっとも骨太で、読み応えのある一冊です。だからこそ冒頭に「この本の読み方」を置きました。分からないところがあっても立ち止まらず、まずは最後まで。二度目に読むとき、きっと景色が変わっています。
全編、ポゥじい・スウカ・カズオの対話形式で進みます。本書は続編のため、『天才ニュートンの頭の中①』からお読みいただくことをおすすめします。
ケプラーの3法則から出発し、楕円軌道の謎に一歩ずつ迫ります。
幾何学の図解に、比や式の変形を重ねながら、一歩ずつ証明を積み上げていきます。
「5つの武器」を自分の頭で積み重ねて核心に迫る、骨太の論理を味わえます。
①のおさらい。円運動における向心力が逆2乗則になることを確認したところから話がつながります。
惑星が「きれいな円」ではなく「楕円」を描くという現実に向き合い、ケプラーの3つの法則をおさらい。第2法則(面積速度一定)を証明し、「面積速度が一定なら、力は必ず中心を向く」という逆命題まで確かめます。
ゼロになって消える寸前の量の「比」だけを取り出す——ニュートンの「顕微鏡」とも言うべき極限の考え方を解説します。のちの微分学の源流にあたる、本書最大の章です。
楕円という図形を丸裸にする5つの補題を、基本データだけを頼りに一つずつ自力で証明していきます。
これまで集めた武器をすべて組み合わせ、主定理【命題11】——楕円軌道を描く惑星が受ける力は距離の2乗に逆比例する——を証明します。
ここまでの計算は天体を「ただの点」として扱ってきました。しかし現実の地球は巨大な球。球全体の引力が、まるで中心の一点に集まっているかのように振る舞うことを、幾何学だけで証明します。
ハレー彗星の予言、そして「天上の法則」と「地上の法則」がひとつに結ばれた意味——『プリンキピア』の物語の締めくくりです。
本書は終始、ポゥじいたちの会話で進みます。冒頭の一場面をのぞいてみましょう。










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