ポゥじいとめぐる「数」の旅

ガリレオの挑戦①速度の謎に挑んだ30年の軌跡

難易度 ふつう 対話形式 名誉教授監修
Kindle Unlimited 読み放題 対象
¥900 税込 / Kindle版

About this bookこの本について

「速度=距離÷時間」。この公式を知っているからこそ、気づかない謎がある。

落下するボールのように、速さが刻々と変わる運動の「速度」とは、いったい何を意味するのか? この問いに、ガリレオ・ガリレイは30年以上向き合い続けた。

本書は、その試行錯誤の軌跡を、個性豊かなキャラクターとの対話形式でたどる数学史読み物です。教科書に載っている「落下の公式」が、どんな実験と思考の積み重ねで生まれたのか。「瞬間の速度」という概念を定義することが、なぜそれほど難しかったのか。「速度とは何か」を30年以上問い続けたガリレオの思考を追体験し、問いに挑み続ける姿勢の意味を知ることができます。

本書のユニークな仕掛けとして、登場人物のカズオがガリレオの「誤った仮説」に思わず共感してしまう場面があります。「その考え方、わかる気がする」――その感覚を通じて、500年前の科学者が陥った思考の罠が、歴史の話ではなく自分ごととして迫ってきます。

全編、ポゥじい・スウカ・カズオの対話形式で進みます。シリーズ初めての方でも楽しめる、単体で完結した一冊です。

For youこんな方におすすめ

科学の公式より、それが生まれた「人間の思考の軌跡」に興味がある方

「速度=距離÷時間」という当たり前の公式の裏にある、30年間の試行錯誤をたどります。

数学・理科は苦手だけど、科学が生まれた「ストーリー」には引き込まれる方

カズオがガリレオと同じ間違いにぶつかる場面を通じて、歴史上の難問が「自分ごと」として感じられます。

子どもや学生に「なぜ公式はこうなのか」を教えたい大人の方

対話形式で一歩ずつ進むので、教える側にとっても「説明の材料」が見つかる一冊です。

Journey highlightsこの旅でめぐるテーマ

「速度」という謎に挑む

現代では当たり前になっている「速度」という考え方も、ガリレオの時代には存在していませんでした。近代科学の原点となった問いをたどります。

登場するキーワードピサの斜塔の逸話、ガリレオ博物館の実験装置、落体実験などを紹介します。

間違いの先にあった発見

ガリレオも最初から正解にたどり着いたわけではありません。試行錯誤や誤った仮説をたどることで、科学が生まれる過程を追体験できます。

登場するキーワード地動説を説明しようとした「潮汐理論」、振り子の実験なども登場します。

ガリレオが迷い込んだ迷宮

「瞬間の速度」をどう定義するかという難問に、ガリレオはどのように挑んだのでしょうか。速度という概念が形づくられていく過程をたどります。

登場するキーワード時間平方則、等速運動の定義、「速度=距離÷時間」が生まれるまでの道のりを紹介します。

Contents目次

1 近代科学を切り開いた探究者 ガリレオ

「ピサの斜塔」伝説の真相から入り、ガリレオが30年以上向き合い続けた「速度の正体」という謎の輪郭を描く導入章。

2 斜面実験が示した「時間平方則」

ガリレオ博物館に実在する、鈴のついた実験装置を通じて、「落下距離は時間の2乗に比例する」という〔時間平方則〕の発見を追体験します。

3 大砲の弾はどう飛ぶ? 水平発射の実験

大砲の弾を水平に飛ばす実験を通じて、落下運動と水平運動を組み合わせた検証の過程を描きます。

4 振り子の実験と「落下理論の出発点」

振り子の等時性を手がかりに、ガリレオが「落下理論」の出発点をどう見出していったのかを追います。

5 速度の謎を解く鍵「飛び出し台の実験」

台から水平に飛び出す物体の実験を通じて、「速度」という捉えどころのない量を測る手がかりを探ります。

6 地動説における誤り――科学が進歩する道筋

ガリレオが地動説の証明として持ち出した「潮汐理論」――今では誤りとされる説を紹介し、誤りを経て科学が進歩していく道筋を描きます。

7 等速運動――あとから見えてきた基本概念

「等速運動」という、今では当たり前の概念が、当時どのように整理されていったのかを解説します。

8 「落下の理論」への長い道のり

実験で得られた断片的な事実を、ひとつの理論としてまとめ上げるまでの長い道のりを描きます。

9 ガリレオが迷い込んだ迷宮…瞬間速度とは?

「瞬間の速度」をどう定義するかという難問に、ガリレオ自身が行き詰まる様子を正直に描く、本書屈指の山場です。

10 まとめ

本書全体を振り返り、続編『ガリレオの挑戦②』――幾何学による証明編――への橋渡しを行います。

Preview試し読み

本書は終始、ポゥじいたちの会話で進みます。冒頭の一場面をのぞいてみましょう。

SAMPLE | 本文より
カズオ
博士、ガリレオ・ガリレイって「近代科学の父」って呼ばれることがありますよね? 教科書にも必ず名前が出てくるすごい人だってことは知ってるんですけど、実際にはどんなことをした人なんですか? ピサの斜塔から物を落とした人、くらいのイメージしかなくて。
ポゥじい
ほっほっ、その「ピサの斜塔から重い球と軽い球を落とした」というエピソードはあまりにも有名じゃな。じゃがカズオくん、実はそれは後世の伝記作家によって作られた話で、ガリレオ自身がその実験をやったという証拠は残っておらんのじゃよ。
カズオ
えっ、そうなんですか!? ずっと実話だと思ってました。
ポゥじい
ふふ、無理もない。世界中で語り継がれている、あまりに有名な伝説じゃからな。実は、「重い物と軽い物が(空気抵抗を除けば)同じように落ちる」ということは、ガリレオの時代にはすでにある程度知られておったんじゃ。じゃが、それをきちんとした『理論』として整理したのがガリレオの大きな貢献じゃよ。だからピサの斜塔の話は、ガリレオの考えを象徴的に伝えるために作られた、いわば"科学的伝説"のようなものかもしれんな。
カズオ
なるほど〜。偉人伝にはそういう話ってよくありますよね。後から「印象的なエピソード」がつけ加えられちゃうってやつ。
ポゥじい
その通りじゃ。それに実際のところ、世間一般でガリレオの業績として一番知られているのは、落下の実験よりもむしろ「天文学」の分野なんじゃ。彼は望遠鏡を使って初めて天体を観測し、いくつもの驚くべき発見をしたんじゃよ。
スウカ
ガリレオが望遠鏡を発明したんですか?
ポゥじい
そこはよくある誤解じゃな。実は、望遠鏡を発明したのはガリレオではないんじゃ。だが、ガリレオは望遠鏡を改良して、人類で初めて「夜空」に向けたんじゃ。
カズオ
へぇ、作った人じゃなくて、使い道を変えた人なんだ。
ポゥじい
その通り。そして彼は、誰も見たことのない宇宙の姿を目撃した。月の表面がボコボコしていること、木星の衛星が回っていること…。多くの新しい事実を明らかにしたんじゃよ。それまでの常識だった「天界は完全無欠でツルツルな世界だ」という思い込みを、たった一本の筒でひっくり返してしまったんじゃよ。望遠鏡の登場は、それまで肉眼でしか見られなかった宇宙の姿を一変させ、天文学のあり方そのものを根本から変えてしまったんじゃ。ガリレオが天体観測を始めてから400年目の2009年は「国際天文年」と名付けられておるほどじゃよ。
スウカ
機械や道具が科学の進歩に影響を与えるってことですね。それって、今の私たちがコンピュータを手にして生活が変わったのと似ているかも。
ポゥじい
まさにその通りじゃ。今では、コンピュータ自体を研究対象にした「コンピュータ・サイエンス」という学問も生まれておる。つまり、ある技術の登場が、それまでの科学のやり方を根本から変えてしまうことがあるというわけじゃ。じゃがの、ガリレオが「近代科学の父」と呼ばれる真の理由は、この天文学の業績だけではない。彼は生涯をかけて、実に30年ものあいだ思考の迷宮をさまよい続けた『最大の謎』があったんじゃ。
カズオ
30年もさまよった迷宮…! それはいったい何なんですか?
ポゥじい
それこそが、カズオくんが最初に言った「物を落とした」という話の核心……つまり『物がどう落ちるか』という落下の理論、もっと言えば『速度の正体』を数学的に突き止めることじゃった。
カズオ
えっ、「速度」ですか? 車のスピードとか、小学校で習う「はじき(速さ=距離÷時間)」のことですよね。そんなに難しいことなんですか?
ポゥじい
ほっほっ、まさにその『当たり前』こそが落とし穴なんじゃよ。それこそが、ガリレオの功績を伝えるのを邪魔している『大きな壁』なんじゃ。現代のわしらが『あまりに当たり前』だと思っているその感覚こそが、当時のガリレオが直面した途方もない困難を見えなくさせておる。想像してごらん。当時のヨーロッパには、今のような正確な時計はない。共通の定規もない。それどころか、現代なら当たり前に使う「距離を時間で割る」という計算すら、当時の数学ではできなかったのじゃ。
スウカ
ええっ!? 時計もなくて、割り算も禁止!? そんな状態で、どうやってスピードを測るんですか!?
ポゥじい
そうじゃろう? 共通のインフラも概念もない世界で、彼がいかにして「速度」という概念にたどり着いたのか…。当時の数学のルールを丁寧に紐解いていかねば、彼の本当の凄さは見えてこないんじゃ。まずは、現代の我々の「速度」の感覚と何が違ったのか、そこから解説していこう。

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Try it実際に触ってみる

本編に登場する図解は、実はこうやって「自分の手で動かして」
確かめられます。3つ、味見してみてください。

鈴が鳴らす
「落下のリズム」

同じ時間ごとに鳴るよう鈴を置くと、鈴の位置は平方数(1, 4, 9, 16…)に。

さわってみる

大砲の
水平発射実験

火薬の量(初速度)を変えても、着地までの時間は変わりません。

さわってみる

円のどこから
転がしても

円周上のどの点から転がしても、いちばん下に着く時刻は同じになります。

さわってみる
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Author著者・監修

Mathematica 編集部

企画・執筆 (監修:電気通信大学名誉教授)

数学史・科学の物語を届けるオンラインマガジン「Mathematica」が制作。専門家の監修のもと、正確さとわかりやすさの両立を大切にしています。本シリーズは、はじめての方でも物語として読み進められることを目指しています。

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