ポゥじいとめぐる「数」の旅

古代ギリシアの数2無理数は本当に発見されていたのか?

難易度 ふつう 対話形式 名誉教授監修
Kindle Unlimited 読み放題 対象
¥500 税込 / Kindle版

About this bookこの本について

無理数は本当に「発見」されたのか――。2500年前の謎に迫る数学史。

ピタゴラス教団の時代、「測れない比」の存在を外部に漏らした者が処罰された、という劇的な逸話が残っています。しかしこの出来事の本当の意味は何だったのか。新しい数の誕生だったのか、それとも「量の本質」をめぐる根本的な問いだったのか――。

古代ギリシア人は、天文学や建築、日々の生活の中で「測ること」と向き合いながら、数や図形の世界を切り開いていきました。そこには、現代の私たちとは少し異なる発想や、不思議に思える価値観が息づいています。本書では、そんな古代の人々の足跡をたどりながら、「無理数は本当に発見されていたのか」という問いに迫っていきます。

全編、ポゥじいと生徒たちの対話形式で進みます。難しい概念も会話の流れで自然に理解できるので、数学が苦手な方でも安心して読み進められます。

For youこんな方におすすめ

「√2ってなぜ無理数なの?」と気になったことがある方

「なぜ」を突き詰めていくと、2500年前の大事件にたどり着きます。素朴な疑問の奥にある数学史をたどります。

古代の人々の思考に触れてみたい方

現代とは異なる「数」と「量」の感覚を体験できます。当たり前だと思っていた前提が、実は歴史の産物だったと気づく一冊です。

数学史をストーリーとして楽しみたい方

「本当に発見だったのか?」という問いを最後まで引っ張る、推理小説のような読み応えがあります。

Contents目次

1 無理数のパニック

「万物は数である」と信じたピタゴラス教団の時代に、√2が分数で表せない「無理数」であることが発見され、教団を揺るがしたという劇的な事件を描く導入章。

2 無理数が必要なわけ

なぜ無理数という概念がそもそも必要だったのかを、古代ギリシア人の「測る」という営みから解き明かします。

3 量の単位と度量衡

長さや重さといった「量」を測るための単位・度量衡の歴史をたどり、「数」と「量」の違いを掘り下げます。

4 古代ギリシアにおける量の捉え方

古代ギリシア人が「量」をどのように定義し、「数」とは別のものとして厳格に区別していたかを解説します。

5 ピタゴラスの定理と古代ギリシアの思考

おなじみの「ピタゴラスの定理」が、古代ギリシアでは現代とはまったく異なる意味・使われ方をしていたことを明らかにします。

6 量の共測と非共測

「共測・非共測」という古代ギリシア独自の概念を通じて、「無理数発見」の本当の意味に迫る、本書のクライマックスとなる章です。

7 ギリシア文明と数学の歩み

ギリシア文明の発展と数学の歩みを重ね合わせながら、数学史全体の大きな流れを振り返ります。

8 古代ギリシアの記数法

古代ギリシア人が使っていた数の表記法(記数法)を紹介し、現代の十進法との違いを解説します。

9 同次元の法則

同じ種類の量同士でなければ足し算や比較ができない、という古代ギリシア数学の厳格なルールを解説します。

10 まとめ

「無理数は本当に発見されていたのか」という問いへの答えを示し、シリーズ第3弾『実数とは何か?』への橋渡しを行う終章です。

Preview試し読み

本書は終始、ポゥじいたちの会話で進みます。冒頭の一場面をのぞいてみましょう。

SAMPLE | 本文より
ポゥじい
今回は、古代ギリシア数学における一大事件、「無理数の発見」について語ろう。この出来事は、当時の数学観を根底から揺るがすもので、「無理数のパニック」として知られておる。
ポゥじい
ピタゴラス教団は「万物は数である」という教義を掲げていた。「数には不思議な力がある」「数を究めればすべてが明らかになる」と信じていたんじゃ。ここでいう「数」とは、自然数やそれらの比、つまり有理数じゃ。教団にとって世界は、美しく調和の取れた整数比によって成り立っていると信じて疑わなかったのじゃよ。
ポゥじい
ところがある日、その信念を真っ向から覆す発見がなされた。メタポンティオン(南イタリアのギリシアの植民都市)の学徒ヒッパソスが、正方形の対角線の長さ――つまり正方形の一辺と対角線の比が、自然数の比では表せないことを示してしまったのじゃ。
ポゥじい
この発見は、ピタゴラス教団にとって実に衝撃的なものであった。これまで「世界はすべて整数比で説明できる」と信じていたのに、身近な正方形の対角線という単純な図形から、思いもよらぬ例外が現れたのじゃ。これは教団の教義に反する禁忌そのもの。神聖な調和が乱されるという思いから、教団はこの事実を長く秘匿したとも言われておる。無理数の存在は彼らの信仰と思想の根幹を揺るがすものだったのじゃ。
スウカ
えっ、そんなに深刻なことだったんですか?今では「一辺が1の正方形の対角線は√2」って、普通に使っているけれど、それが世界観を壊すほどの出来事だったなんて…。歴史の中で、当たり前のことが当たり前じゃなかった時代があるって、ちょっと面白いですね。
ポゥじい
まさしく。この事実は教団内で秘中の秘とされたが、幾何学を探求する者たちにとって、隠し通すのは難しかった。やがてヒッパソスが口外したことが明るみに出て、教団の怒りを買い、船上から海へ突き落とされた…という逸話まで残っておる。もちろん、この話が真実かどうかは分からぬ。だが、それほどまでに無理数の発見は、当時の世界観にとって危険なものだったということじゃ。
カズオ
数の発見で命を落とすなんて…。でもそれだけ「数」が当時の人たちにとって、ただの道具じゃなく、世界の真理そのものだったんですねぇ。
ポゥじい
うむ。今では、わしらはもっと広い「数」の考え方を持っておる。有理数というのは、分子aと分母bが共に整数の分数a/bで表わされる数のことじゃ。有理数は整数と分数でできた世界、無理数は有理数でない実数のこと。今では当たり前に思えるこの数の広がりも、実は長い歴史の中で少しずつ築かれてきたものなのじゃよ。

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Author著者・監修

Mathematica 編集部

企画・執筆 (監修:電気通信大学名誉教授)

数学史・科学の物語を届けるオンラインマガジン「Mathematica」が制作。専門家の監修のもと、正確さとわかりやすさの両立を大切にしています。本シリーズは、はじめての方でも物語として読み進められることを目指しています。

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