
科学史上もっとも重要と言われながら——「誰も読まない」という不思議な本があります。
ニュートンの『プリンキピア』です。人類の考え方を一変させた科学の原点でありながら、あまりに難解なため、実際に読み通した人は驚くほど少ないと言われています。その最大の謎は、書き方にあります。当時すでに広まりつつあった代数ではなく、ニュートンは2000年前の古代ギリシアの幾何学によって宇宙の法則を証明しました。なぜ、そんな回り道を選んだのでしょうか。
本書は、この謎を入り口に、ニュートンが「動き続ける世界」を数学で捉えようとした道のりを、対話形式でたどります。『プリンキピア』が「世界を変えた本」と呼ばれる理由が、きっと見えてくるでしょう。
読みどころのひとつは、終盤の「月のテスト」です。地上のリンゴと天空の月が、同じ計算式でぴたりと結ばれる——ニュートンといえば誰もが思い浮かべるあの逸話を、本書は最後まで計算で見せたあとで、「この正確な計算は、ニュートンの時代に完成された話ではない」という歴史の実像まで踏み込んで明かします。ニュートンの視線は、円軌道のさらに先に向いていました。楕円軌道でも成り立つことを証明できて、はじめて宇宙の法則と呼べる——本書の締めくくりは、その壮大な問いへの入り口でもあります。
全編、ポゥじい・スウカ・カズオの対話形式で進みます。図版を豊富に使い、証明を一歩ずつ会話で追いかける構成なので、数学から離れて久しい方でも読み進められます。本書から読み始めても分かるように書かれています。なお本書には、ガリレオが発見した「落下の法則」がたびたび登場します。ニュートンがガリレオの実験と結論をどう尊重し、自らの理論の中でどう扱ったのか——それを述べるための登場であり、本書だけで理解できるよう解説しています。現実の惑星が描く「楕円軌道」の証明は、続編『天才ニュートンの頭の中②』で扱います。
リンゴのエピソードの先にある、ニュートンの本当の思考の道のりをたどります。
ペストによる大学休校が生んだ「驚異の年」など、ニュートンの人柄や経歴にも触れており、人間ニュートンの物語として読める一面もあります。
現代から見れば回り道のようですが、そこには「厳密な証明」というしっかりとした理由がありました。その選択の意味に一歩ずつ迫ります。
「誰も読まない」「原題に残る哲学」「幾何学だけの書き方」——3つの謎を入り口に、「驚異の年」、ハレーが私財を投じた出版の経緯、「われ仮説を作らず」、錬金術や神学への傾倒まで、『プリンキピア』誕生の背景をたどります。
運動の3法則と、その土台となる「定義」。物体の量が密度と体積の「比」で組み立てられていく様子を通して、ニュートンがなぜ幾何学という言葉を選んだのか、その必然に迫ります。
『サルと鉄砲』のお話から、力を合成する「平行四辺形の法則」へ。さらに曲線の面積を「限りなく細かい階段」ではさみ撃ちにする補助定理まで——のちに微積分へとつながっていく考え方を、図とともに追いかけます。
円軌道を舞台に、惑星を中心へ引きつづける「向心力」の正体を解き明かします。そしてケプラーの第3法則とフックの逆平方則が、数学的にぴたりと繋がることを確かめます。
月は1秒でどれだけ進み、どれだけ「落ちる」のか。実際の月の動きと、地上の重力から計算した値——2つの数値が一致する瞬間を、自分の手を動かしながら追体験します。
感動的な「月のテスト」に、歴史の実像という補足を添えて。そしてニュートンの視線の先にあった「楕円」という最大の謎へ——続編②への橋渡しです。
本書は終始、ポゥじいたちの会話で進みます。冒頭の一場面をのぞいてみましょう。















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