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無理数 とは

無理数とはどのような数か?

無理数とは、整数の比(分数)として表すことができない実数のことです。

まず、実数を分類するために、有理数との違いから見てみましょう。

無理数とは

有理数とは?

有理数とは、分子 a と分母 b がともに整数で、b ≠ 0 の形で表せる数です。

つまり、a / b の形に書けるすべての数が有理数です。

例としては次のようなものがあります:

  • 整数(例:1, 0, -3)
  • 有限小数(例:0.5 = 1/2、0.125 = 1/8)
  • 循環小数(例:0.333… = 1/3、0.142857142857… = 1/7)

循環小数とは、小数部分に一定の繰り返しがある無限小数のことで、必ず分数に直すことができます

「1」「2」「3」のようにものの個数を数える時に使う数を自然数といいます。自然数に「0」と「-1」「-2」「-3」といった負の数を合わせた数を整数といいます。このほかに整数の比で表される分数や小数があります。

無理数とは?

一方で、無理数はこのような分数で表せない数です。

つまり:

  • 小数として表すと、無限に続いて終わらず
  • しかも、同じ並びが繰り返されることがない(非循環)

という特徴があります。

代表的な無理数の例:

  • 円周率 π(3.14159…)
  • √2(1.41421…)
  • e(自然対数の底、2.71828…)

これらはどんなに頑張っても、有限の整数の比として正確に表すことはできません

有理数と無理数 有理数は整数、有限小数、循環小数

数の歴史──数はどのようにして生まれたのか

古代において「数」として認識されていたのは、1、2、3…といった自然数だけでした。羊の数を数えたり、道具の個数を把握したりと、数はごく実用的な目的で用いられていたのです。

しかし人類の活動が複雑になるにつれて、“数”の概念は少しずつ拡張されていきます。「0」や負の数、小数、分数、さらには√2やπのような無理数の発見を経て、ついには実数という広い概念にたどり着きました。

私たちは現在、「無理数は有理数でない実数である」と簡単に定義できます。けれども、そのためにはまず「実数とは何か」が明確でなければなりません。そしてその厳密な定義が与えられたのは、19世紀になってからのことです。

「数とは何か?」

これは単なる数学的な問いにとどまらず、人類の思考と発展の軌跡そのものとも言えるのです。数の進化の物語をたどるWeb連載『数の発明』も、ぜひ併せてご覧ください。▼

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私たちはどのようにして「数」の概念にたどり着いたのか?人類の進化と進歩の歴史を辿ります。

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無理数の発見 ― ピタゴラス学派の動揺

ある日、ピタゴラスあるいはその弟子たちは、正方形の対角線の長さが有理数では表せないことに気づきました。1辺の長さを1としたとき、対角線の長さは √2 になります。ところがこの √2 は、整数の比(a/b の形)では表せない、つまり無理数なのです。

万物は数(自然数の比)である」という信条を掲げていたピタゴラス教団にとって、これは深刻な問題でした。

もっとも基本的な図形である正方形に、その教義に反する“数でない数”が潜んでいたからです。教団は極めて閉鎖的な秘密結社であり、この発見は外部には絶対に漏らしてはならない“秘中の秘”とされました。

しかし、無理数は円や三角形など、幾何学図形のあらゆる場面に自然に現れてきます。幾何学に魅せられた教団の内部でも、この発見を隠し続けることは困難だったに違いありません。

やがて、ヒッパソスという教団の一員が、この秘密を外部に漏らしてしまったとされます。

伝説によれば、掟を破ったヒッパソスはピタゴラスによって船上から突き落とされ、命を落としたとも言われています(ただしこれは神話的な要素を含み、史実とは断定されていません)。

この危機を受けて、ピタゴラスは「量」という新たな概念を考案し、“数”と“量”を分けることで教義と現実を両立させようとしたと伝えられています。

ピタゴラス学派に関するこのようなお話はたくさん残っていますが、実は後世に生み出されたお話が混在しています。

関連記事以下の記事で詳しく解説しています++。

古代ギリシアの数学者ピタゴラスのお話[Vol.1]

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