素数
用語
Prime Number

素数

1より大きい自然数のうち、1と自分自身以外に約数を持たない数。
ひとことで言うと

すべての自然数を分解するときの基本的な構成要素となる数。

素数とは

この用語の要点
  • 1より大きい自然数のうち、1と自分自身以外に約数を持たない数
    • 1から100までに25個ある。いちばん小さい素数は2で、偶数の素数はこれだけ
    • 素数は無限にある。ユークリッドが『原論』で示した

素数とは、1より大きい自然数のうち、正の約数を1と自分自身の2つしか持たない数のことです。最も小さい素数は2で、唯一の偶数の素数でもあります。1から100までには2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, …と全部で25個の素数が存在します。

1から100までを10列に並べた表。色のついた25個が素数。2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37 41 43 47 53 59 61 67 71 73 79 83 89 97。

1より大きい自然数のうち、素数でない数を合成数といいます。合成数は、2個以上の素数をかけ合わせて表すことができ、これを「素因数分解」といいます。そして、2以上の自然数が、素数を並べる順序を除いてただ一通りに素数の積として表されること。これを「算術の基本定理」といいます。

なお、1は素数でも合成数でもありません。 1を素数に含めると 6 = 2×3 = 1×2×3 = 1×1×2×3 … と書き方が際限なく増えて、算術の基本定理の一意性が成り立たなくなるためです。

素数はどのように現れるか

先ほど、1から100までに素数が25個あると書きました。では、もっと大きな数まで数えるとどうなるでしょうか。

  • 100までに 25個(全体の25.00%)
  • 1000までに 168個(16.80%)
  • 10000までに 1229個(12.29%)

区切りを10倍にしても、素数の個数は10倍にはなりません。数が大きくなるにつれて、素数が自然数全体に占める割合は、長い目で見ると小さくなっていきます。

いっぽうで、3と5、11と13、17と19のように、差が2である2つの素数もあります。これを双子素数といいます。100以下には8組あり、けた数の非常に大きなものも見つかっています。

まばらになっていくはずの素数のなかに、こうした組はどこまでも現れ続けるのか。双子素数が無限にあるかどうかは、いまも分かっていません。

素数は無限に存在する

「素数は無限に存在する」ことは、古代ギリシアの数学者ユークリッドが『原論原論(ストイケイア)古代ギリシアの数学者ユークリッドが著した数学書。定義・公準・共通概念から出発して命題を積み重ねる構成で、幾何学から数論までを体系化した全13巻。詳しく見る →』第IX巻・命題20で示しました。のちの時代の数学者から「もっとも美しい証明の一つ」として称賛されている証明です。

以下は、ユークリッドユークリッド「ユークリッド幾何学」でおなじみの幾何学の父詳しく見る →の議論を現代的な背理法に書き直したものです。素数が有限個しかなく、そのすべてが p₁, p₂, …, pₖ だと仮定します。そして、

a = p₁ × p₂ × … × pₖ + 1

という数を考えます。この a を、リストにあるどの素数 pᵢ で割っても余りは1になります。つまり、a はどの pᵢ でも割り切れません。

a が素数なら、それはリストになかった新しい素数です。a が合成数だとしても、a を割り切る素数が少なくとも一つあり、その素数もリストには含まれていません。

いずれの場合も、「すべての素数を並べた」という最初の仮定と矛盾します。したがって、素数は無限に存在します。

実際の数でたどってみる

いまの議論は、どんなリストから始めても成り立つ話です。それでも、実際の数で見ると飲み込みやすくなります。

とくに気をつけたいのは、a が素数になるとは限らないことです。たとえば 2×3×5×7×11×13 に1を足すと 30031 になりますが、これは 59×509 という合成数です。それでも59も509もリストになく、やはりリストの外の素数が出てきます。証明で場合を2つに分けているのは、このためです。

下の図で、リストを変えながら1手ずつたどれます。

さらに深掘り

そもそも、なぜ素数に興味を持ったのか

いまの私たちは、素数を暗号や情報技術と結びつけて考えます。ですが古代ギリシア人には、そんな用途はありませんでした。それでも彼らは、素数を含む数の性質を熱心に調べています。

その動機を、ひとつの理由で説明することはできません。

当時のギリシアでは、数学と哲学と宗教的な世界観が、いまほどはっきり分かれていませんでした。アリストテレスアリストテレス万学の祖 古代ギリシアの大哲学者詳しく見る →は『形而上学』のなかで、ピタゴラス学派の考えを「数こそが万物の根源である」と要約しています。彼らにとって数は、計算の道具であると同時に、世界の秩序を読み解く手がかりでもありました。

いっぽうで素数は、約数や倍数、最大公約数といった整数のしくみを調べていけば、自然に現れてくる数でもあります。分解できる数と、それ以上分解できない数。その違いをはっきりさせることは、数の世界を筋道立てて理解するために欠かせませんでした。

素数が暗号という実用の役割を担うのは、それから2000年以上あとのことになります。

小石を並べた形で数をとらえた

ピタゴラスピタゴラス宇宙の原理を数と結びつけた古代ギリシアの哲人詳しく見る →とその学派には、数を点や小石の並びとして考える伝統がありました(※『小石の数理』参照)小石の数理数を小石を並べた図形として捉え、偶数・奇数・三角数・正方形数・長方形数などに分類したギリシア数学の考え方。。小石を並べて形を作り、その形から数の性質を読み取るのです。

たとえば、小石を2列に同じ数ずつ並べられる数が偶数。2列に並べると1個余る数が奇数です。

同じように、縦にも横にも2個以上ある長方形に並べられるかどうかを考えてみましょう。4なら2×2、6なら2×3、9なら3×3の長方形が作れます。ギリシア人はこうした数を長方形数と呼びました。現代でいう合成数にあたります。

ところが2、3、5、7のような数は、1列に並べるしかありません。縦にも横にも2個以上、という形にはどうしても並べられないのです。これがギリシア人にとっての素数でした。

合成数aがbとcの積で表されるなら、小石をb個ずつc列に並べれば長方形ができます。分解できるかどうかが、そのまま形になって見えるわけです。

『原論』が結びつけた素数と完全数

『原論』第IX巻では、素数と並んで「完全数」も扱われています。完全数とは、自分自身を除く約数の和が、自分自身に等しくなる数のこと。6の約数は1, 2, 3, 6で、6自身を除くと 1+2+3=6 になるので、6は完全数です。

一見すると素数とは別の話題ですが、『原論』はこの2つを結びつけました。いまの記号で書くと、示されているのは次の定理です。

2ᵏ − 1 が素数で、n = 2ᵏ⁻¹(2ᵏ − 1) ならば n は完全数

古代ギリシアで知られていた完全数(6, 28, 496, 8128)は、すべてこの形になっています。ただし、どんな素数からでも作れるわけではありません。 2ᵏ−1 という形の数が素数になる必要があり、この形の素数を、いまではメルセンヌ素数と呼びます。

ポゥじい博士の見立て

ついでに言っておくと、いま伝わっている『原論』は、ユークリッド一人がまとめた形のまま残っておるわけではないのじゃ。よく知られた全13巻に加えて第14巻・第15巻が付いた版が広まった時期があるが、これは後世の別人が書き足したもので、ユークリッド自身の仕事ではないと今では分かっておる。素数や完全数を扱う第IX巻は本来の13巻の中身じゃが、『原論』という書物自体が一枚岩ではなく、後の世に手を加えられ続けてきた文書だということは、覚えておいて損はないぞ。

そして、まだ解けていない問いも残ったままです。奇数の完全数は存在するのか。完全数は無限にあるのか。古代ギリシアで調べられた数が、2000年以上たったいまも未解決の問いを生み続けているというのは、なかなか壮観だと思います。

本ではこう語られています

素数は「1とその数自身しか約数を持たない数」と定義されますが、偶数の素数がただひとつしかないという事実は見落とされがちです。

古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれたこの本を見る
ポゥじい
任意の自然数 a は、必ず 1 と a 自身を約数として持っている。そして、それ以外に約数を持たない数、これを素数と呼ぶ。最初の素数は 2 じゃ。そして面白いことに、偶数の素数はこの 2 だけなんじゃよ。

電子書籍:古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれた では、この素数の定義から素因数分解、素数の無限性の証明までを解説しています。

本ではこう語られています

完全数を生み出す 2ᵏ−1 の形の素数は、いまも探し続けられています。

古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれたこの本を見る
ポゥじい
うむ。だからこそ、メルセンヌ素数は今日に至るまで尊敬を集め、それに関連する完全数も、数学者たちのロマンとして今も輝いておるのじゃ。

電子書籍:古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれた では、メルセンヌが挙げた候補のどれが誤りだったか、人の手で見つけられた最大級のメルセンヌ素数は何かまで、対話でたどっています。

広告
広告250×250
古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれた
電子書籍

古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれた

小石を並べる数の数え方から、三角数・完全数、パスカルの三角形の原型、正多面体、数神秘主義まで、古代ギリシア数学の土台を対話形式でたどる一冊です。

この本を見る