オイラーの多面体定理
定理
Euler's Polyhedron Formula

オイラーの多面体定理

凸多面体では、頂点の数-辺の数+面の数=2 が常に成り立つという定理。
ひとことで言うと

凸多面体であれば形によらず必ず成り立つ、頂点・辺・面の数に関する公式。

オイラーの多面体定理とは

この用語の要点
  • 凸多面体なら『頂点の数 - 辺の数 + 面の数 = 2』が成り立つ
  • 18世紀にレオンハルト・オイラーが発見した

18世紀の数学者レオンハルト・オイラーオイラー現代数学の設計者詳しく見る →は、多面体における頂点・辺・面の数の間に成り立つ関係式を発見しました。

頂点の数 - 辺の数 + 面の数 = 2

これが「オイラーの多面体定理」と呼ばれる式です。英語の頭文字をとって V - E + F = 2 と書くこともあります(V は頂点、E は辺、F は面)。この関係は、凸多面体(へこみのない閉じた立体)であれば常に成り立ちます。

たとえば正四面体(頂点4、辺6、面4)の場合、4-6+4=2となります。5種類の正多面体で数えると、次のようになります。

5種類の正多面体の頂点・辺・面の数を並べた表。正四面体は4・6・4、正六面体は8・12・6、正八面体は6・12・8、正十二面体は20・30・12、正二十面体は12・30・20。

どれも「頂点-辺+面」を計算すると2になります。どんなに形が違っても、凸多面体であればこの値は変わりません。

この「頂点 - 辺 + 面」という値は、のちにオイラー標数と呼ばれるようになりました。伸ばしたり曲げたりしても変わらない量なので、形の「本質的なつながり方」を扱う位相幾何学(トポロジー)では基本的な道具になっています。

なお、凸多面体でないものでは、この値が2にならないことがあります。たとえば、真ん中に四角い穴があいた額縁のような多面体では、頂点-辺+面は0になります。

正多面体(プラトン立体)とは

多面体とは多くの面によって囲まれた立体のことです。その中でも特に高い対称性を持つのが「正多面体」です。

正多面体とは、次の2つの条件を満たす立体を指します。

  • 各面がすべて同じ正多角形である
  • 各頂点において出会う正多角形の個数が等しい

2つめの条件は、正四面体を2つ貼り合わせたような立体を除くために必要です。

正多面体(プラトン立体)5種類のイラスト。正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体。

この条件を満たす立体は、世の中に5種類しか存在しません。これは、正多面体の一つの頂点に集まる正多角形の内角の合計が360度未満でなければならないという制約から導かれます。たとえば正六角形を3つ頂点で合わせると内角の和がちょうど360度になり、平面になってしまうため立体はできません。

この5種類の正多面体は、古代ギリシアの哲学者プラトンにちなんで「プラトン立体正多面体(プラトン立体)すべての面が合同な正多角形で、各頂点に集まる面の数もすべて等しい凸多面体。この条件を満たす立体は5種類しか存在しない。」とも呼ばれます。

さらに深掘り

正多面体はなぜ5種類しかないのか

正多面体は、面の数を増やしていけばいくらでも作れそうな気がします。ですが実際に正多面体と呼べる立体は、世の中に5種類しか存在しません。

理由は、1つの頂点に集まる面の角度を数えていくとわかります。正多面体の頂点には必ず3つ以上の面が集まりますが、そこに集まる角度の合計は360°未満でなければなりません。ちょうど360°になると平らになってしまい、立体を折り曲げる余地がなくなるからです。

正三角形(1つの角は60°)なら、頂点に3つ集めると正四面体、4つ集めると正八面体、5つ集めると正二十面体ができます。6つ集めると60°×6=360°でぴったり平らになり、それ以上は立体になりません。

正方形(1つの角は90°)は3つ集めると正六面体(立方体)ができますが、4つでは90°×4=360°でこれも平らに。正五角形(1つの角は108°)も3つ集めると正十二面体ができますが、4つでは108°×4=432°で360°を超えてしまい、そもそも組み上がりません。

正六角形(1つの角は120°)は、3つ集めた時点で120°×3=360°。角の数がこれより多い正多角形も同じ理由で頂点に組み合わせられません。

こうして条件を満たす組み合わせは、正三角形3個・4個・5個、正方形3個、正五角形3個の5通りだけに絞られ、それぞれ正四面体・正八面体・正二十面体・正六面体・正十二面体という、ちょうど5種類の正多面体に対応します。

プラトンが元素に割り当てた4つの立体

古代ギリシア人は、宇宙を構成する元素が火・空気・水・土の4つであると考えていました。プラトンプラトン古代ギリシアの哲学者詳しく見る →は著書(※『ティマイオス』参照)ティマイオスプラトンの対話篇。宇宙を構成する火・空気・水・土の4元素を、5つある正多面体(プラトンの立体)のうち4つに割り当てたことで知られる。の中で、この4つの元素に5つの正多面体のうち4つを割り当てました。

正四面体は角張っているので火。正六面体は平面に敷き詰められるので土。正二十面体は球に近く丸まっているので水。そして火と水の中間に、正八面体の空気が入ります。

残る正十二面体は、万物を包み込む宇宙のうつわと見なされました。面の数12は、1年の月の数にあたります。この正十二面体が「エーテル」、つまり宇宙に充満する第5の元素と結びつけて語られるようになるのは、のちの時代のことです。

ポゥじい博士の見立て

正多面体が5種類しかないというのは、角度の制約から導かれる数学の結論じゃ。誰がどう思おうと、この数は変わらん。

じゃが古代の人々は、その5つに宇宙の作りを重ねてみせた。数の上での事実と、そこに見た意味と。この二つが並んで残っておるところが、わしにはおもしろいのじゃよ。

ポゥじい博士の見立て

ところで、この定理に名前を残しておるオイラーが何をした人か、ひとことだけ言うておこう。

オイラーは、「関数」のような記法を次々に導入して、数学を図形から記号の計算へ移した人じゃ。ニュートンやガリレオの数学は幾何じゃったが、いまわしらが教科書で見る形にしたのは、この男でな。本人はこう言うておる。「ニュートンやガリレオの数学を学ぶには、非常な努力と天才が要る。じゃがわしの記号を使えば、練習さえすれば誰でも習得できる」とな。

親切な話じゃろう。じゃが裏を返せば、「公式ばかりで数学は嫌いだ」という人を増やした張本人でもあるのじゃよ。

本ではこう語られています

この5つの立体の話は、Mathematicaの書籍でも一章を立てて扱っています。プラトンが元素を割り当てたくだりを、ポゥじいはこう語っています。

古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれたこの本を見る
ポゥじい
火は正4面体、空気は正8面体、土は正6面体、水は正20面体、そしてエーテル(宇宙に充満する神秘的な元素)、あるいは宇宙空間には正12面体をあてがった。あくまで哲学的な象徴じゃが、形と意味とを結びつける想像力こそが、当時のギリシア思想の粋ともいえるのじゃよ。

形と意味を結びつけた古代の想像力について、続きは書籍でお楽しみください。

関連する人物
広告
広告250×250
古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれた
電子書籍

古代ギリシアの数1 数学はこうして生まれた

小石を並べる数の数え方から、三角数・完全数、正多面体、数神秘主義、ゼノンの逆説まで、古代ギリシア数学の歩みをポゥじいと生徒の対話でたどる一冊。

この本を見る