オイラー とは?
レオンハルト・オイラーは、18世紀のスイス生まれの大数学者です。
代数学、解析学、幾何学、数論、さらには物理学・工学・天文学に至るまで、ほぼすべての分野で多大な業績を残しました。現代の数学の記号や概念の多くは、オイラーによって整えられたと言っても過言ではありません。
時代背景 オイラー が活躍した時代はどんな時代?
オイラーが生きた18世紀は、「啓蒙の時代」と呼ばれ、科学・哲学・教育が大きく花開いた時代です。ニュートンの古典力学が確立され、それに続く科学的体系化が進められていました。数学は応用と理論の両面で急速に進展し、オイラーはその中心的存在でした。
彼の膨大な著作は、現在も多くの数学者や科学者に影響を与えています。
ベルヌーイ家との縁から始まった才能
レオンハルト・オイラーは1707年、スイスのバーゼルに生まれました。幼い頃から数字や計算に強い関心を持ち、勉強熱心な子どもだったと伝えられています。父親は牧師でしたが数学にも造詣が深く、オイラーに早くから数学の手ほどきをしました。
そして彼の才能を見出したのが、名門ベルヌーイ家の数学者ヨハン・ベルヌーイです。ヨハンはオイラーの非凡な素質を見抜き、若き数学者にとって貴重な指導者となりました。この出会いが、オイラーの本格的な研究生活のはじまりとなったのです。
オイラーはその後、生涯にわたり驚くべき量の研究成果を論文や著作として残しました。解析学、代数学、数論、物理学、工学、天文学など、活躍の分野は多岐にわたり、現代数学の土台の多くは彼の業績に支えられています。
オイラーの公式:数学の最も美しい公式
オイラーは数学の世界に数々の業績を残しましたが、以下はオイラーの公式と呼ばれ、数学の最も美しい公式と称されています。
eiθ=cosθ + isinθ
ここで e はネイピア数(自然対数の底)で、約 2.718 です。iは虚数単位で、i2= −1 となります。
特に θ = π とした時、
eiπ + 1 = 0
となり、これはオイラーの等式と呼ばれています。この等式は、数学の五つの基本的な定数(e, i, π, 1, 0)が一つの式にまとまる奇跡的なもので、「数学の宝石」とも称されます。これほど異なる数学的概念が一つのシンプルな式で結びつくことは、数学者たちにとって驚きと感動をもたらしました。
ケーニヒスベルクの橋
ケーニヒスベルクの橋は、現在のロシアのカリーニングラードに位置する旧ドイツの都市ケーニヒスベルクに存在していた7つの橋の配置にまつわる有名な数学問題です。
具体的には、以下の条件のもとで橋を渡れるかを考えます:
1.どの橋も一度だけ渡る。
2.全ての橋を使う。
3.最初にいた場所に戻ってくる。
オイラーは、この問題の解決にあたり、地図上の詳細な形状を無視し、橋と陸地の関係だけに注目しました。そして、橋を「辺」、陸地を「頂点」とする抽象的な「グラフ」に置き換えて、この問題を解くことにしました。
オイラーは、各頂点(陸地)に接続されている辺(橋)の数を「次数」と呼び、この問題においては各頂点の次数が奇数であると解決できないことを示しました。ケーニヒスベルクの場合、全ての頂点が奇数の次数を持っていたため、このような条件で橋を一度ずつ渡って元の位置に戻ることは不可能である、と証明したのです。
この考え方はトポロジー(位相幾何学)という分野の発端となりました。
オイラーの研究により、この問題は数学やコンピューターサイエンス、ネットワーク理論、道路設計、物流など多くの分野に応用され、現代の「グラフ理論」の礎を築きました。
1735年頃オイラーは生涯のうちに目が悪くなり、最終的にはほとんど視力を失ってしまいました。しかし、視力が失われても数学の研究をやめませんでした。オイラーは頭の中だけで計算や図形のイメージをして、論文を次々と書き続けたのです。
数学記号を整えた功績者
オイラーは、現代数学に欠かせない記号の多くを整備・普及させた人物としても知られています。たとえば、関数を表す 「f(x)」 という表記や、円周率を示す記号 「π」 を一般化したのはオイラーの功績です。
さらに、総和を表すギリシア文字 「Σ(シグマ)」 や、虚数単位 「i」 の記号も、オイラーが用いたことで広まり、定着しました。
こうした記号の整備により、数学の記述は簡潔かつ論理的になり、国や時代を超えて数学者同士がスムーズに思考を共有できる基盤が築かれたのです。
記号という“言語”を整えることで、オイラーは数学の発展そのものを加速させたと言えるでしょう。
オイラーの多面体定理
オイラーは平面や関数だけでなく、立体図形の性質にも深い関心を持っていました。彼は、四角錐や立方体などの多面体に共通する数の関係を発見し、次のような有名な公式を示しました:
V – E + F = 2
ここで、
V:頂点(vertex)の数
E:辺(edge)の数
F:面(face)の数
この関係式は「オイラーの多面体定理」として知られ、すべての凸多面体において成り立つ驚くべき法則です。
このシンプルな式は、トポロジー(位相幾何学)やグラフ理論の出発点ともなっており、オイラーの先見性を象徴する業績の一つです。
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