数式のない時代に、
どうやって証明するのか。
掛け算の記号がない。割り算も自由に使えない。小数も分数も、量に対しては使えない。 そんな数学で、ガリレオはどうやって落下の法則を「証明」したのでしょうか。
当時のヨーロッパの数学には、はっきりした決まりがありました。 数(自然数)と、量(長さ・面積・角度)は別のものである、と。 数には四則演算が許されても、量には足し算と引き算しかできない。 しかも同じ種類のもの同士でしか許されません。長さと面積を足すのは禁じ手でした。
この制約のなかで議論を進めるために、ユークリッドは『原論』で高度な「比の理論」を築きました。 ガリレオが武器にしたのは、この道具立てです。ここでは代表的な3つを、実際に動かしながら見ていきます。
1. グノモン——L字形の面積が語ること
2つの長方形を、角を合わせて重ねます。するとL字形ができます。 これを「グノモン」と呼びます。重なった部分が内部長方形、外にはみ出した2つが突起部、 全体を囲む大きな長方形が外部長方形です。
点Cを動かして、「イ」と「イ′」の面積を同じにしてみてください。 面積がぴったり一致したとき、点Cがどこにあるかにも注目です。
2つの突起部が等しくなると、点Cがちょうど外部長方形の対角線の上に乗ります。 逆もまた成り立ちます。
〔グノモンの定理〕と呼ばれるこの関係が、比の理論の土台になります。 ここから、学校で習う「外項の積と内項の積は等しい」—— a : b = c : d ならば a×d = b×c—— にあたる関係が、図形の言葉で導かれます。
2. 底辺をそろえる——足せないものを足す
次の問題です。面積どうしを足したいとき、形がばらばらでは比べようがありません。 そこでこんな技法が使われます。面積を変えずに、底辺だけを好きな長さに変換する。
元の長方形と、変換後に使いたい底辺の長さ e が与えられたとき、 高さをいくつにすれば面積が保たれるでしょうか。 手順を追いながら、最後は自分で探してみてください。
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はみ出した イ と イ′ は、図1で見た突起部です。 ぴったり合ったとき、A・F・C の3点が一直線に並びます。 面積がそろう高さと、点が一直線に並ぶ位置が、いつも同じところにある。 なぜそうなるのかは、書籍で確かめてみてください。
3. 比例中項——半円で平方根を作る
3つめが、ガリレオが落下の理論の証明でくり返し使うことになる道具です。 2つの線分aとbから、その比例中項——いまでいう √(a×b) にあたる長さを、計算ではなく作図で取り出します。
できます。しかも驚くほど簡単です。ステップを送りながら見てください。
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半円を描いて、垂線を1本立てる。それだけで √(a×b) の長さが目に見える形で現れます。 種明かしは直径に対する円周角が必ず直角になるという円の性質です。 そこから2つの相似な直角三角形が生まれ、 a : x = x : b という関係が成り立ちます。
aとbの長さを変えても、この関係が保たれることを下で確かめられます。
Hをどこに動かしても、CH² と a×b がいつも一致します。
この3つが、30年の答えを支える
ガリレオは、「速度が時間に比例して増える運動」を等加速度運動として定め、 そこから落下距離が時間の2乗に比例することを導きました。 現代の私たちなら数行の式で済ませるところを、彼は図形の積み重ねで組み立てています。 その組み立てを支えたのが、ここで見た比と面積、そして比例中項です。
その証明が実際にどう組み立てられているのか。 比例中項がどこで、どんなふうに切り札として使われるのか。 いちばんの山場は『ガリレオの挑戦2』のなかにあります。 現代の分数を使った証明と、ガリレオ自身が使えた比の理論だけの証明を、 ポゥじいとカズオ、スウカの3人が並べて追いかけていきます。