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introduction
数学の歴史には、いくつもの「発見の瞬間」が語り伝えられています。そのひとつが、ピタゴラス教団の時代に「無理数」が発見されたという逸話です。正方形の一辺と対角線の比は整数比で表せない――その事実を外部に漏らした者が処罰された、という劇的な物語さえ残っています。
しかし、この出来事の本当の意味は何だったのでしょうか。「無理数の発見」と呼ばれるものは、本当に私たちが思うような「新しい数の概念の誕生」だったのか。それとも、当時の人々が抱えていた“数の本質”そのものに深く関わる出来事だったのか。古代ギリシアの人々は、天文学や建築、日々の生活の中で「測ること」と向き合いながら、数や図形の世界を切り開いていきました。そこには、現代の私たちとは少し異なる発想や、不思議に思える価値観が息づいています。この本では、そんな古代の人々の足跡をたどりながら、「無理数は本当に発見されていたのか」という問いに迫っていきます。
SAMPLE




目次
- 1.無理数のパニック
- 2.無理数が必要なわけ
- 3.量の単位と度量衡
- 4.古代ギリシアにおける量の捉え方
- 5.ピタゴラスの定理と古代ギリシアの思考
- 6.量の共測と非共測
- 7.ギリシア文明と数学の歩み
- 8.古代ギリシアの記数法
- 9.同次元の法則
- 10.まとめ