曲線を、階段ではさむ。
段を細かくしていくと、何が起きる?
面積の求め方は、学校で習います。四角形ならたてとよこを掛ける。三角形は底辺と高さ、円は半径。 どれも公式があって、数を当てはめれば答えが出ます。 では、ぐにゃりと曲がった線の下の面積はどうでしょう。公式がありません。
定規で測ろうにも、まっすぐな辺がひとつもない。 17世紀の数学者たちは、この「測れない面積」の前で立ち止まっていました。
内側と外側から、階段ではさむ
やり方はこうです。まず底辺をいくつかに区切ります。 区切りごとに長方形を立てるのですが、2通りの立て方をします。
ひとつは、曲線より必ず低くなるように立てる長方形。 これをつなぐと、内側に引っ込んだ階段ができます。この階段は曲線の下に収まっているので、 その面積は曲線の下の面積より必ず小さい。
もうひとつは、曲線より必ず高くなるように立てる長方形。 こちらをつなぐと、外側にはみ出した階段ができます。 その面積は曲線の下の面積より必ず大きい。
ここまでは、まだ答えが出ていません。分かったのは「答えはこの2つのあいだにある」ということだけです。 ではここから、どうやって追いつめるのか。区切りを増やしてみてください。
分割を細かくしてみる
分割を増やすと、内側は増え、外側は減り、その差が縮んでいきます。
差は、どこへ行くのか
差にあたる部分だけを取り出して、横にずらして積み上げてみると、 細い柱が1本できあがります。この柱の高さは、分割をいくら増やしても変わりません。 変わるのは幅だけです。分割の数に反比例して、どこまでも細くなっていきます。
細かい言い方の違いに見えるかもしれません。けれど、ここが慎重に選ばれた表現なのです。 ニュートンは、のちに流率と名づける計算法をこのときすでに手にしていましたが、 『プリンキピア』ではそれを使っていません。 極限を扱うための共通の記号や言葉も、まだ整っていない時代でした。 「ゼロになった」と言わずに、それでも答えを1つに定める。 そのための言葉づかいだったのです。
この階段が、宇宙で使われる
曲線の下の面積を、細かく刻んで足し合わせる。 この見方は、面積を求めるためだけのものではありません。
惑星が太陽のまわりを回るとき、その動きも曲線です。 どれだけ進んだか、どれだけ落ちたか、どれだけの面積を掃いたか。 曲がったものを、細かく刻んで扱うという同じ手法が、そこでも使われます。
この記事でたどったこと
公式のない図形の面積を、上と下からはさんで追いつめる。 曲線より低い長方形を並べれば、必ず小さい側の見積もりになり、 高い長方形を並べれば、必ず大きい側になります。 答えがこの2つのあいだにあることは、分割がいくつであっても変わりません。 そして分割を増やすほど、2つの差は縮んでいきました。
もうひとつが、その差をどう言い表すかでした。 ニュートンは「幅がゼロになった」とは言わず、分割を限りなく増やしたときに 外側と内側の比が行き着く先を〔究極の比〕と呼び、それが1対1になるとしました。 ゼロと言わずに答えを1つに定める、という言葉の選び方です。 曲がったものを細かく刻んで扱うこのやり方が、このあと惑星の軌道にそのまま使われます。