第1巻/P.60あたりに記載

曲線を、階段ではさむ。
段を細かくしていくと、何が起きる?

面積の求め方は、学校で習います。四角形ならたてとよこを掛ける。三角形は底辺と高さ、円は半径。 どれも公式があって、数を当てはめれば答えが出ます。 では、ぐにゃりと曲がった線の下の面積はどうでしょう。公式がありません。

曲線を、階段ではさむ。段を細かくしていくと、何が起きる?

定規で測ろうにも、まっすぐな辺がひとつもない。 17世紀の数学者たちは、この「測れない面積」の前で立ち止まっていました。

カズオ
方眼紙に描いて、マスを数えるのはどうですか。 はみ出したところは……うーん、目分量になっちゃいますね。
ポゥじい
その「目分量になってしまう」ところが問題での。 ニュートンは、目分量を使わずに追いつめる方法をとったんじゃ。 正しい答えを、上と下からはさみこむのじゃよ。

内側と外側から、階段ではさむ

やり方はこうです。まず底辺をいくつかに区切ります。 区切りごとに長方形を立てるのですが、2通りの立て方をします。

ひとつは、曲線より必ず低くなるように立てる長方形。 これをつなぐと、内側に引っ込んだ階段ができます。この階段は曲線の下に収まっているので、 その面積は曲線の下の面積より必ず小さい。

もうひとつは、曲線より必ず高くなるように立てる長方形。 こちらをつなぐと、外側にはみ出した階段ができます。 その面積は曲線の下の面積より必ず大きい。

つまり、こうはさまれている 内側の階段 < 曲線の下の面積 < 外側の階段

ここまでは、まだ答えが出ていません。分かったのは「答えはこの2つのあいだにある」ということだけです。 ではここから、どうやって追いつめるのか。区切りを増やしてみてください。

分割を細かくしてみる

5
内側の階段
—
曲線の下の面積
—
外側の階段
—
2つの差
—

分割を増やすと、内側は増え、外側は減り、その差が縮んでいきます。

スウカ
上と下から、じりじり詰め寄っていくんですね。 差の数字が、どんどん小さくなっていきます。

差は、どこへ行くのか

差にあたる部分だけを取り出して、横にずらして積み上げてみると、 細い柱が1本できあがります。この柱の高さは、分割をいくら増やしても変わりません。 変わるのは幅だけです。分割の数に反比例して、どこまでも細くなっていきます。

カズオ
じゃあ、幅をゼロにすれば差もゼロになって、答えが決まりますね。
ポゥじい
うむ、現代ならそう説明するところじゃな。しかしニュートンは違った。 ニュートンは「幅はいくらでも小さくできる」という言い方をしたんじゃ。 分割の数は限りなく増やす。じゃが「幅がゼロになった」とも、 「できあがった無限個の長方形を足した」とも言っておらん。 そのうえで、外側と内側の比が行き着く先を〔究極の比〕と呼び、 それが1対1に等しくなるとしたのじゃよ。

細かい言い方の違いに見えるかもしれません。けれど、ここが慎重に選ばれた表現なのです。 ニュートンは、のちに流率と名づける計算法をこのときすでに手にしていましたが、 『プリンキピア』ではそれを使っていません。 極限を扱うための共通の記号や言葉も、まだ整っていない時代でした。 「ゼロになった」と言わずに、それでも答えを1つに定める。 そのための言葉づかいだったのです。

この考え方自体は、古代ギリシアにありました 内と外からはさんで面積を求めるやり方は、アルキメデスがすでに使っていたものです。 ちがいは適用の範囲でした。アルキメデスは放物線のような具体的な曲線について計算したのに対し、 ニュートンは一般の曲線で成り立つものとして議論を進めました。 書籍では、そこが「積分学の源流」と呼ばれる理由だとしています。

この階段が、宇宙で使われる

曲線の下の面積を、細かく刻んで足し合わせる。 この見方は、面積を求めるためだけのものではありません。

惑星が太陽のまわりを回るとき、その動きも曲線です。 どれだけ進んだか、どれだけ落ちたか、どれだけの面積を掃いたか。 曲がったものを、細かく刻んで扱うという同じ手法が、そこでも使われます。

ポゥじい
道具はこれで揃った。ここから先が、いよいよ『プリンキピア』の本題じゃ。 惑星がなぜ、あの軌道を通るのか。それを図形だけで解いていくぞ。

この記事でたどったこと

公式のない図形の面積を、上と下からはさんで追いつめる。 曲線より低い長方形を並べれば、必ず小さい側の見積もりになり、 高い長方形を並べれば、必ず大きい側になります。 答えがこの2つのあいだにあることは、分割がいくつであっても変わりません。 そして分割を増やすほど、2つの差は縮んでいきました。

もうひとつが、その差をどう言い表すかでした。 ニュートンは「幅がゼロになった」とは言わず、分割を限りなく増やしたときに 外側と内側の比が行き着く先を〔究極の比〕と呼び、それが1対1になるとしました。 ゼロと言わずに答えを1つに定める、という言葉の選び方です。 曲がったものを細かく刻んで扱うこのやり方が、このあと惑星の軌道にそのまま使われます。

ここで扱ったのは、ニュートンが『プリンキピア』で組み立てた道すじの一場面です。 彼が何に悩み、どこで間違え、どうやって答えにたどり着いたのか。 その道のりは電子書籍『天才ニュートンの頭の中1』で詳しく書いています。

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