第2巻/P.58あたりに記載

片方の焦点から出た光は、
必ずもう片方の焦点に集まる。

楕円の描き方をご存じでしょうか。板に画びょうを2本刺して、 その2本に糸をひっかけ、ぴんと張ったまま鉛筆をぐるりと回す。それだけで楕円が描けます。

片方の焦点から出た光は、必ずもう片方の焦点に集まる。

この2本の画びょうにあたる点を焦点といいます。 円のまん中がひとつなのに対して、楕円には要となる点が2つあるわけです。 そして糸の長さは変わりませんから、こういう性質が生まれます。

楕円のいちばん基本の性質 どこにいても、2つの焦点までの距離を足すと同じになる

分かっているのは、これだけです。ここから何が引き出せるでしょうか。

カズオ
距離の合計が同じ、というだけですよね。 そんなに使いみちがあるようには見えませんけど……。
ポゥじい
ふぉっふぉっ。それがのう、この一行だけを元手にして、 驚くような性質がいくつも取り出せるんじゃ。ひとつ見てみるかの。 片方の焦点から、光を放ってみようではないか。

どこで跳ね返っても、必ず届く

楕円の内側を鏡だと思ってください。片方の焦点から光を出すと、壁で跳ね返ります。 さて、その光はどこへ行くでしょうか。

光を放ってみる

40°
入ってくる角 / 出ていく角 = —

跳ね返る場所を動かしてみてください。どこで跳ねても、行き先は変わりません。

スウカ
端のほうで跳ねても、上のほうで跳ねても、 ぜんぶ同じ点に集まります。跳ね返る場所を変えても、入射角と反射角はつねに互いに等しいままです。

片方の焦点から出た光は、どの向きに飛ばしても、 壁で1度跳ね返ってもう片方の焦点に集まります。 この反射の性質を見ると、「焦点」という名前の意味もよく分かります。

「鏡に映す」というひと工夫

では、なぜそうなるのでしょうか。手がかりは、さきほどの一行しかありません。 ここで使われるのが、鏡に映すという工夫です。

やることは2つだけです。跳ね返る点での接線を鏡に見立てること。 そして、もう片方の焦点をその鏡に映すこと。 下の図で、1ステップずつ追いかけてみてください。

1ステップずつ確かめる

40°

もう一度、順に書き出すとこうなります。 跳ね返る点 P での接線を鏡に見立て、もう片方の焦点 H を この接線に関して対称に移した点が H′ です。 鏡の上のどの点から見ても、H までの距離と H′ までの距離は同じですから、 H へ向かう道のりは H′ へ向かう道のりに置きかえられます。 そして点 P では S・P・H′ が一直線に並ぶので、その道のりはまっすぐな1本の線になります。

折れ曲がっていた光の道のりが、まっすぐな1本の線として測れるようになりました。 曲がった道の長さくらべは面倒ですが、まっすぐな線なら簡単です。 そして「2点を結ぶいちばん近い道は直線」という、誰もが知っている事実が効いてきます。

書籍ではさらに詳しく ここでは「点 P では S・P・H′ が一直線になる」ことを、図で見たとおりのこととして進めました。 書籍では、なぜそう言えるのかを順を追って示したうえで、 入ってくる角と出ていく角が等しいことまで導いています。
ポゥじい
問題を、そのまま解こうとせん。解ける形に置きかえてから解く。 これがニュートンのやり方じゃ。この先も、ずっとこの調子で進んでいくぞ。

書籍では、これらの性質を「そういうものだ」と示して終わりにはしていません。 先ほどの一行だけを手持ちの道具として、ひとつずつ証明していくという進め方をとります。 書籍では、そこが『プリンキピア』の醍醐味だとしています。

これは、5つあるうちのひとつです

いま見た光の反射は、楕円がもつ性質のひとつにすぎません。 書籍では、こうした性質を「武器」と呼び、全部で5つ用意します。 どれも、あの一行から自分たちの手で導き出していくものです。

そして5つが揃ったとき、いよいよ「魔の山」に登ることになります。 刻々と距離が変わり、力も速さも変わり続ける楕円の動きが、 たったひとつの式に収まっていく。その最終決戦が待っています。

ポゥじい
残りの4つは、どれも一筋縄ではいかん。じゃが、 使う道具は今日と同じ、あの一行だけじゃ。さあ、続きは本の中で会おうかの。

この記事でたどったこと

片方の焦点から出た光は、楕円の壁のどこで跳ね返っても、 もう片方の焦点へ集まりました。跳ね返る場所を動かしても、行き先は変わりません。 入射角と反射角がつねに互いに等しいことは、図の数字でも確かめられます。

なぜそうなるのかを見せてくれたのが、鏡に映すという置きかえでした。 跳ね返る点での接線を鏡に見立て、もう片方の焦点をその鏡に関して対称に移す。 すると折れ曲がった道のりが、まっすぐな1本の線として測れるようになります。 問題をそのまま解かず、解ける形に置きかえてから解く。 楕円を扱う「5つの武器」は、どれもこの調子で組み立てられていきます。

6つの入口から、『プリンキピア』へ

最初の3本で見てきたのは、ニュートンの考え方を支える道具でした。

中心から四方へ広がるものを球面で考えると、なぜ「距離の2乗」が現れるのか。 複雑な動きを2つに分けると、何が見えてくるのか。 公式のない曲線の面積を、上と下からはさんで追いつめるにはどうすればよいのか。

どれも、出発点は素朴な考え方です。 しかも、ニュートンがひとりで考え出したものばかりでもありません。 フックが書き残した見当、ガリレオが明らかにした動きの分け方、 アルキメデスまでさかのぼるはさみうち。 受け継いだ見方を、天体の運動を解くための道具として組み合わせていったのです。

後半の3本で、その道具を向けたのが楕円です。

円では変わらなかった距離や速さが、楕円では刻々と変わる。 それでも、同じ時間に掃く面積は、軌道のどこにいても変わらない。 そして、曲がった光の道を鏡に映し、まっすぐな線の問題へ置きかえる。

複雑なものを、いきなり解こうとしない。 比べられる形、測れる形、すでに知っている形へ置きかえてから考える。 6つの記事を通して見えてきたのは、そんなニュートンのやり方でした。

ただし、ここまではまだ『プリンキピア』への入口です。

楕円軌道と面積の法則から、惑星を引く力が距離の2乗に反比例すると、どう導けるのか。 地球のように広がりをもつ球体の引力を、外から見ると、 なぜ中心の一点に集まったものとして扱えるのか。

書籍では、その証明を図形と比の言葉で、一歩ずつたどっていきます。

見当をつけることと、証明すること。その隔たりを、ニュートンはどう詰めていったのか。 続きは『天才ニュートンの頭の中』1・2でお付き合いください。

ここで扱ったのは、ニュートンが『プリンキピア』で組み立てた道すじの一場面です。 彼が何に悩み、どこで間違え、どうやって答えにたどり着いたのか。 その道のりは電子書籍『天才ニュートンの頭の中2』で詳しく書いています。

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続きは、本編で
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